経済成長を考える

「経済」は「地球」のサブシステムである

「カウボーイ型経済」では、地球は無限であり、経済も無限に大きくすることができると考えます。しかし、実際には、地球は無限ではありません。46億年前に誕生して以来、地球の大きさは変わっていません。太陽光線以外は、外から何も入ってこないのですから、新しい原材料やエネルギーが増えていくわけではないのです。地球は有限です。

そこで重要なのは、「経済」と「地球」を結びつけて考えることです。どんなに科学技術が進歩したとしても、私たちが地球の生態系の中で活動していることには変わりはありません。そして、経済活動もその例外ではないのです。つまり、地球が有限ならば、地球の上で営まれている経済活動もその制約の中で行うしかない、ということです。私たちの「経済」はあくまでも「地球」という枠の中で行われるものであり、その枠を飛び出すことはできないのです。

このことを、ハーマン・デイリーたちの構築したエコロジー経済学では、「経済は地球の生態系のサブシステムである」と言っています。定常経済を考える上で、基本となる考え方です。

ハーマン・デイリーは、「持続可能性のための3原則」をシンプルにまとめています。生態系という地球の大きな営みの範囲内で、経済を営むとはどういうことなのかがよくわかります。

ハーマン・デイリーの3原則(『成長の限界 人類の選択』メドウス他, 2005より)

  1. 「再生可能な資源」の持続可能な利用速度は、その資源の再生速度を超えてはならない。
    たとえば、魚を獲る速度が、残りの魚が繁殖して数が増える速度を超えていれば、持続可能ではありません。
  2. 「再生不可能な資源」の持続可能な利用速度は、再生可能な資源を持続可能なペースで利用することで代用できる速度を超えてはならない。
    たとえば、石油を持続可能なペースで利用するためには、石油使用による利益の一部を風力発電、太陽光発電に投資しつづけ、埋蔵量を使い果たした後も同等量の再生可能エネルギーを利用できるようにすることが必要です。
  3. 「汚染物質」の持続可能な排出速度は、環境がそうした汚染物質を循環し、吸収し、無害化できる速度を上回ってはならない。
    たとえば、持続可能な形で下水を、川や湖、地下の帯水層に流すには、バクテリアなどの有機物が、水生生態系を圧倒したり、不安定にしたりすることなく、下水の栄養分を吸収できる速度を超えてはいけません。

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