レスポンシブル・エコノミーとは

パタゴニアのウェブサイトにおいて、レスポンシブル・エコノミーについて以下の様に記しています。

「レスポンシブル・エコノミー (責任ある経済)」は、 繁栄とは成長と消費の拡大に基づいた経済のことであるという前提に
疑問を投げかける、パタゴニアの新しい環境キャンペーンです。このキャンペーンで私た ちは地域社会が栄え、有意義な仕事を生み出し、地球が補充できる分だけを自然界から減じて使う、より責任ある経済とはどのようなものかを検証していきます。

人類の未来に暗い影を落としている地球温暖化や生物多様性の危機といった"環境問題"は、実は「問題」ではなく、「症状」のひとつです。根本的な「問題」は、有限の地球のうえで、無限の経済成長を求める、現在の経済や社会の構造ではないでしょうか。

一方、これまで世界の大部分では、経済成長は社会のために必須だと考えられてきましたし、現在の経済や社会が経済成長を前提として組み立てられています。したがって、経済成長至上主義に異を唱えようとすると、「社会保障はどうするんだ」「国際競争力を失ってしまう」等、瞬間的な反駁や否定の声が飛んできます。

経済成長は「必要かもしれないが、可能ではない」?

「必要である」ことと「可能である」ことは別物です。現在のしくみでは経済成長は「必要である」かもしれませんが、すでに地球が1.5個必要なほど大きくふくれあがった人間活動を、経済成長によってさらに膨張させていくことは、どう考えても持続可能ではありません。つまり、「必要かもしれないが、可能ではない」のです。

「技術の革新や進歩が解決してくれる」という声もよく聞きます。「経済成長を続けても、地球への環境負荷を増やさなければよい」というわけです。考え方としてはたしかにそうですが、どれほど環境効率の良い技術を使ったとしても、何らかの人間活動を行う際の地球への環境負荷がゼロということはありえません。「前よりはマシ」ではあっても、「ゼロではない」としたら、経済成長を続ける限り、環境負荷は増えていきます(増え方は前よりはゆっくりであったとしても)。

技術の進歩は重要ですからどんどん進めるべきですが、根本的な問題解決ではなく、時間稼ぎにとして考えなくてはなりません。やはり考えるべきは「経済成長をどこまでも続けなくてもよい経済や社会に転換していくこと」だと思うのです。

誰も答えを発見していない難題と向きあう

どのように「経済成長に頼らない経済や社会」に転換していけばよいのでしょうか? 特に「経済成長が前提となっている経済」の中で事業を行っている企業は、現在の土俵の上での自らの事業の持続可能性と、その土俵そのものが引き起こしている地球/人類の持続可能性との折り合いを、どのようにつけながら進むことができるのでしょうか?

それを考え、試行錯誤し、社会のさまざまな人々と対話・議論しながら、正しい方向への歩みを進めていくことが「レスポンシブル・エコノミーを考える」ことだと思っています。

今回、だれも答えを発見していないこの難題に、パタゴニアが真正面から向きあい、進んでいこうとしています。一緒に活動を展開できることは、とても光栄であり、楽しみです。

枝廣淳子/幸せ経済社会研究所