100人それぞれの「答え」

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会社員

T さん(20代 男性)

経済成長とは、個人個人が能力やお金を稼ぐ能力をつけること

Q. 経済成長とはどういうことですか、何が成長することですか

個人個人が、能力や、もしくはお金を稼ぐ能力をつけること、それが集合したら、経済成長になるんじゃないかなと思います。

──個人の能力、お金を稼ぐ能力をつける、それが成長すること

かなと。そう思う理由は、私は普通の会社員ですけれども、会社に所属しないでもお金を稼ぐ方法がありますし、いろんな所でお金を稼ぐ方法も含めて、選択肢が増えているような気がしていて。そういう人や、そういう働き方が増えるというのも、まとまったら成長になるんじゃないかなと。

──そういうとらえ方で経済成長を考えたときに、金を稼ぐ能力が伸びると、結果的に、何が増えて経済成長につながるんでしょう?

仮に、私が10万円、15万円稼ぐ能力が増えたとき、それは消費にもつながるのではないかと思います。欲しいものを買うかもしれないし、いいものを食べたいと思うかもしれない。それが循環することで成長につながっていくのかなと。

──お金を稼ぐ力が増えると稼げるお金が増えて、稼げるお金が増えると消費が増える。

かなと。

Q. 経済成長することは望ましいものですか、それはなぜですか

ある程度までは望ましいと思います。仮に、私の給料が1.5倍になったらうれしいですけど、それが100倍になるのが望ましいかと言われると、そうではないと思いますし、それは、4番の質問になるのかもしれないですが、不可能だと思います。

──不可能という感じはどのへんから来ているのですか?

限界があるだろうと思うからです。自分の給料が倍になって、欲しいものが買える、食べたいものが食べられるという話をしましたが、それも限界があるなということです。2倍、3倍になったら、今の倍おいしいものを食べたとして、100倍になったとして、100倍おいしいものを食べられるわけではなく、永遠に欲しいものが現れるわけではないだろう。そういう意味での限界があると思います。

──こちらの「欲しい」という欲望がどこまでも増えていくわけではないということ?

欲望は無限に増えるのかもしれないですけれども、欲望を満たし続けられるものが無限に出てこないんじゃないかなという気がします。

──たとえば給料が100倍になったとして、100倍おいしいものが食べたいと思っても、100倍おいしいものが......。

現れないんじゃないかなと。欲望らしいものは永遠に現れそうな気がしますけど、それを満たし続けるものが生産されるのかなと思います。

Q. 経済成長は必要なものですか、それはなぜですか。

──経済成長することは必要だと言っている人もいるし、必要じゃないと言っている人もいるけど、どう思いますか?

必要だと思います。個人的には、お金がもっと欲しいなとか、買いたいものがあるというのは、正しいというか、あってしかるべき思いというか、健全だと思います。頑張ってお金を貯めてあれを買おうとか、こういうことをしたいとかというのは、すごく尊いと思います。私は買い物するのも好きですし。

経済成長は必要じゃないかと思います。必要だけれども、永遠に続けられるかと言うと、それはどうかなという思いがします。

Q. 経済成長を続けることに伴う犠牲はありますか、それは何ですか、なぜ生じるのですか

かなりお金の話をしましたが、お金を追い続けるだけではいけないよなと思います。「お金がすべてだ」みたいになるのは、ある意味、犠牲なのかもしれない。これまでも、日本は生産性が低いとか、残業が多いとか言われ続けていますけど、そんな生活を続ける中で家族と一緒にいる時間や余暇の時間を切り詰めてお金を稼いでいた、みたいなところには、自分を犠牲にしていたところがあると思います。

──自分の何が犠牲に?

お金を稼ぐことが目標になってしまって、お金を増やせばいい、貯金をいっぱい持てばいい、みたいな気持ちになると、お金を使って得られるものも得られないですし。時間もそうです。残業してお金を稼いだけれども、家に帰って寝るだけみたいな毎日を送っていれば、働くこととお金以外のすべてを犠牲にしていることになります。

──生まれてから今まで生きてきた中で、日本の経済が成長しているという、経済成長の実感はありますか? それとも、あまりそういう実感はない?

あまり感じたことはないです。

新聞を読んでいても、景気が良くなったとか、税金が上がったというのを見ても、あまりそういう感覚は沸いてこないですね。短絡的かもしれませんが、今、経済が良くなっているとして、「春から給料が上がります」と言われれば、経済は成長していると思うかもしれないですが。

──社会人1年目ですよね。昔だと、勤続年数が増えれば増えるほど、給料は増えていくという実感があったけど、今、新しく入った人たちは、そういう感覚を持っているのかな?

勤続年数に応じて、少しずつ上がっていくんだろうなというイメージはあるんですが、かと言って、そう上がるわけでもなく、そんなに変わらないかなと。

──親の世代だと、どうだったと思います?

年々、上がっていくという思いはあったと思います。あとは安定した会社に入って、そこにずっといることがよし、みたいな価値観を持っているなと、両親と話すときに思います。

──安定した所にいるとお給料も上がり続ける、と。

私は、そうは思わないですけれども。

──そのあたりの違いはどこから来ているのでしょうね? 経験なのかな。

どうなんでしょう。大きい会社に入ったら、安定しているだろうというイメージは、何となくわかるんです。でも、そうは言っても明日のこともわからないし、給料が上がるかもわからないし、会社がなくなっているかもしれないし。

と考えたときに、安定している会社に長く勤めてというのは、確かに1つのあり方だと思うんですが、個人的には、会社に所属すること以外の生活への憧れはあります。会社に勤めるようになって、自分の自由にできる時間が減ったからこそ、ないものねだりというか、会社勤め以外の生活にあこがれているだけなのかもしれないですが。

そこに至った思いは2つあって、もともと自分は、安定だとか何だというのが、そんなに好きではないということ。会社にいれば給料が毎年少しずつ上がっていくと思いますが、そうでない生活に憧れているだけなんだと思います。

──それは、自分で違うことをやったほうが、いわゆる給料が上がっていく可能性があるという意味? それとも、可能性があまりない所で人に使われているくらいだったら、自分でやりたいことをやったほうがいいということ?

後者ですね。今の仕事はもちろん好きですし、会社も好きですけど、新しくチャレンジできる何かがあるのだとすれば、それに挑戦するのもまたありだと思います。今の時点で何かやりたいことや目指すものが明確にあるわけではありませんが。

──学生の時からそういう志向性があった?

いや、働き始めてからです。明日から会社来なくいいから、好きにしていいからといわれたとしたら、凄く不安になると思います。今の生活がある程度満たされているからこそ、こういう思いになっているのだと思います。

Q. 日本がこれまで経済成長を続ける中で失ったものがあるとしたら何でしょうか

──これは親の世代の話になると思うので、ちょっと難しいかもしれないですが......。

さっきの話と近いですが、お金を稼ぐためにやってきたことの代償に、家族で一緒にいる時間や、自分の時間を捧げているんじゃないかなとは思います。

Q. 「経済成長」と「持続可能で幸せな社会」の関係はどうなっていると考えますか

心の豊かさみたいなものなのかなとは思います。ここまでの話とつながらないかもしれませんが。

──つながらなくてもいいですよ。

欲というか、欲しいものは際限なく現れると思います。お金がいくらあればいいというものでもないし、満たし続けられるものでもないと思います。どこかで折り合いがつけられればいいのかなと思いますが。折り合いがつけられれば、それなりの経済成長で、それなりに幸せって。両方に失礼ですけど。

──でも、きっと、折り合いですよね。折り合いは、どういうふうにつけられるでしょうね。

お金があればいいわけじゃないし。自分で、これぐらいお金があったらいいとか、こういう生活をしたいとか、明確な考えを持てば、個として自立できるのかなという感じがします。

──自分でそれが明確にわかれば、それを超えてまでどんどん増やそうとする必要はなくなっていく、そこである意味満たされるというか、これでいいという感覚が持てると、折り合いがつけられる。

かなと。

──ありがとうございました。


インタビューを終えて

「経済成長」という言葉に想起するものは本当にさまざまなのだなあと思います。こうやっていろいろお聞きしながら、ご本人にとってもじっくり考えて深めていくこと、こうして原稿になったものをみていただいて、ふたたびご自分でも考えてみること--このプロセスに意味があるのだなあとつくづく思います。

取材日:2014年3月23日


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