100人それぞれの「答え」

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デンマーク工科大学 土木工学学部 名誉教授

ヨアン・スティグ・ノルゴーさん

経済成長の便益を人間の「幸せ」で測り、コストを環境へのダメージで測るアプローチなら、コストをほとんどかけずに、幸せで環境的にも持続可能な生活を作り出すことができます

Q. 経済成長とは何でしょうか?

従来の経済学者は今日、「経済成長」とは、GDPで測られる「貨幣の流通」が増えることであると理解しています(実際には物質的なものやスループットが伴います)。これは、古典派経済学(「真の経済学」)が定義していた経済成長ではありません。古典派経済学では、経済成長のより重要な目的は「人間の満足や幸福を高めること」だったのです。

Q. 経済成長は望ましいものでしょうか?

私たちの国のような裕福な国々にとっては望ましいものではありません。そこでは、この成長は主に、既存の金融制度を支持し、満足させるものであって、人々に満足を与えるものではないからです。そのような経済成長は、人々の幸福の指標というより、環境破壊を示す指標です。

Q. 経済成長は必要なものですか?

裕福な国々には、もう必要ではありません。

発展途上国においては、私たちの国がかつてそうだったように、「経済成長が幸福の何らかの進展を示す」ということもあるでしょうけど、それも、物質的な基本ニーズを十分に満たす時点までです。今日、裕福な国々では、経済成長は主に、経済そのものが作り出す「ニーズ」を満たすために利用されています。

Q. 経済成長を続けていくことは可能でしょうか?

いいえ

エダヒロ:それはなぜですか?

限界のある地球上で、物理的な拡大を永遠に続けていくことはできません。それに、あらゆる経済活動には、大なり小なり、ある量の物質的な投入が必要となるので、経済成長は限界に突き当たってしまうでしょう。これらの絶対的な限界に達するよりずっと前に、経済成長をめざして奮闘し続けると、"成長の便益"よりも"成長のコスト"のほうが大きくなり、結果的に「不経済な成長」となってしまうでしょう。

Q. 経済成長を続けることは、何らかの犠牲やデメリットをもたらしているでしょうか?

はい

エダヒロ:どのようなものでしょうか?

私たちは、主にもっと多くの仕事を作り出すために、天然資源や環境を犠牲にしています。そして、物質的な必需品や、自然や家族、友人たちとの豊かな良い暮らしに必要である量の3倍から5倍も働いています。その理由は、経済システムです。その経済システムのために、「する必要のある少しの仕事をシェアし、誰も失業者として取り残されないようにする」ことができないのです。

Q. 経済成長を続けてきた間に、あなたの国が失ったものがあるとしたら、それは何でしょうか?

これまでの800年で、デンマークは、ほぼすべての森や、それ以外の手つかずの自然を失ってしまいました。そしてそれに伴って、動植物の野生種をも失いました。

ここ80年で、私たちは農業における生物多様性の多くも失いました。

この8年間に、私たちは、経済成長のための競争的な取り組みを進める中で、連帯やお互いへの信頼を失くしてしまいました。

Q. 経済成長と持続可能で幸せな社会との関係をどのようにお考えですか?

私は未来の選択肢を分析するにあたり、自分が「真の経済学」的アプローチ(または"現実的な経済学")と呼んでいるものを使っています。

この中では、その便益は人間の「幸せ」(または満足)として定義され、最終的なコストは、エコロジカル・フットプリントなどで測られる環境へのダメージです。こういったツールを使えば、コストをほとんどかけずに、幸せで環境的にも持続可能な生活を作り出すことができます。

それは単純に、労働時間を減らし、消費を減らし、旅行や移動を減らすなどして、また、お互いや自然と共に、豊かな生活をもっと楽しむ、ということです。やろうと思えば、私たちにはできますよ!


インタビューを終えて

デニス・メドウズ氏らが立ち上げた世界のシステム思考・持続可能性の研究者・実践家のグローバルネットワーク「バラトングループ」のシニアメンバーであるヨルゲンに答えてもらいました。
彼が「真の経済学」的アプローチ(または"現実的な経済学")と呼ぶアプローチでは、人間の「幸せ」(または満足)で経済成長の便益を測り、環境へのダメージで測るコストを比べて考えるというもので、たしかにそういうアプローチなら「幸せで持続可能な社会での経済成長」を考えることができるなあと思います。
そして、その実現のための方法は、「労働時間を減らし、消費を減らし、旅行や移動を減らすなどして、また、お互いや自然と共に、豊かな生活をもっと楽しむ、ということです」。とっても魅力的です!(どうして私たちはそうしないのでしょうね???)

取材日:2015年3月15日


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