社会のありかたを探る

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「他国と比べると日本には貧困層はあまりいない」と思っている人も多いように思いますが、実はそうではありません。日本の社会では、しばらく前から、さまざまな側面での二極化が進行し、貧困率も上昇しつつあります。

 「貧困率」という言葉はこれからもよくお目にかかると思いますが、2種類の「貧困率」があるので、何かを読むときにも区別する必要があります。幸せ経済社会研究所サイトの「キーワードコーナー」の解説を引用します。

 貧困率とは、どれくらいの割合の人が貧困状態にあるのかを表す数値です。貧困には大きく分けて2種類あり、先進国の貧困を表すのによく使われるのが相対的貧困、発展途上国の貧困を表すのによく使われるのが絶対的貧困です。

 相対的貧困率は、国民の所得の中央値(所得の低い額から順番に並べたときにちょうど真ん中の額)の半分未満の所得しかない人々の割合を示すものです(*1)。つまり、この場合の貧困層とは、国民の大多数の人よりも貧しい人々のことを指しています。OECDのFactbook2010(2000年代半ばのデータ)によると、当時のOECD加盟国30カ国のうちで、相対的貧困率がもっとも高かったのはメキシコ(約18.5%)、2番目がトルコ(約17.5%)、3番目は米国(約17%)、そして日本は4番目(約15%)でした。逆に貧困率がもっとも低かったのはデンマーク(約5%)でした【グラフ参照】。

 この「データのつながりを読む」コーナーの「日本は平等な社会? 不平等になりつつある?」では日本の社会の中で格差が広がりつつある状況を見ました。「貧困率が高く、格差が広がりつつあるのが日本の社会なのだ」と私たちの認識を改める必要があります(この認識を共有して、みなで必要な手立てを進めていく必要があります)。

 では、もう1つの貧困とはどのようなものでしょうか? 「絶対的貧困」とは、収入や支出がある基準(貧困線)に達していない状態を指します。

 国際的な基準としては、世界銀行が2008年に設定した1日あたり1.25ドル未満という基準がよく使われています(*2)。世界銀行によると、2008年には1日1.25ドル未満で暮らす貧困層は、12億9000万人(発展途上国の人口の22%に相当)いたと推定されています。これは1981年の19億4000万人と比較すると、大きく減少していることがわかります。

 さらなる取り組みが必要ではありますが、絶対的貧困層が大きく減少しているのはとてもうれしいことです。

「世界的には絶対的貧困層が減少している一方で、先進国では貧困や格差の拡大が問題となっている」状況なのですね。

(注)*1 OECDでは、等価可処分所得の中央値の半分の金額未満の等価可処分所得しかない人の割合を算出しています。

*2 世界銀行の1.25ドルという基準は、世界の最貧国10ー20か国の貧困線の平均です。また1日2ドル未満という基準が使われることもありますが、これは発展途上国の中央値にあたります。

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