幸せのパラドックス
「なぜ経済成長を求めるの?」と聞くと、「所得が増えて、幸せになれるから」という答えが返ってくることがよくあります。「経済が成長すれば国民の幸福度も高まる」と多くの人が思っています。
でも果たしてそうなのでしょうか?
先進国の調査によると、経済成長によって一人あたりの所得が増えても、あるところを超えると、一人当たり所得の伸びと「幸福度」の伸びが明確な相関を持たなくなることがわかっています。
年間所得が1~2万ドルを超えるあたりから、所得が増えても幸福度は高くならず、頭打ちになったり、場合によっては下がってくるのです。
これは「幸せのパラドックス」と呼ばれています。最初にこのことを提唱した米国の経済学者、リチャード・イースタリンにちなんで「イースタリンのパラドックス」と呼ばれることもあります。
以下は、日本の一人当たりGDPと生活満足度のグラフです。日本でも「一人当たりGDPが増えても、生活満足度は上がっていない(下がっている)」ことがわかります。
(草郷孝好, 2009)
「そうすれば、幸せになれるから、経済成長が必要(ほしい)」と思っていたのに、少なくとも先進国では、経済成長しても幸福度が変わっていないとしたら? 「それでも経済成長を追求すべき」なのでしょうか?