100人それぞれの「答え」

写真:ニールス・マイヤーさん

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デンマーク工科大学名誉教授

ニールス・マイヤーさん

雇用の問題は、ベーシック・インカムによるワークシェアで公平に解決できる

Q. 経済成長とはどういうことですか?

たいていの経済学者は、経済成長の尺度として国内総生産(GDP)を用いています――これまでのGDPの概念には欠点があることが十分に立証されているにもかかわらず、です。もっと良い代替案が数多く発表されてきましたが、そういった代替案(さまざまな指標のいくつか)はより複雑であることが多いのです。たとえば、代替案を見るにはハーマン・デイリーをご覧ください。しかしメディアや政治家たちは、経済成長に対するひとつのシンプルな数字を好みます。そういうわけで、経済成長に関する政治的な議論はいまだに、誤解を招く従来型のGDPの概念に基づいているのです。
質問に対して情報を盛り込んだ詳しい回答をしようとすると、大型の記事か、本が1冊必要になってしまうかもしれませんね。

Q. 経済成長は望ましいものですか、それはなぜですか?

従来のGDPの成長として測られる経済成長は、多くの有害な影響をもたらします。地球温暖化、汚染全般、わずかしかない資源の枯渇などです。これは望ましくありません。次の質問に対する回答でさらに議論を展開しましょう。

Q. 経済成長は必要なことですか? それはなぜですか?

経済成長を続けていくことが必要だとする主な議論のひとつは、「生産性を高める経済成長がなければ、失業者が生まれる」というものです。現在の経済システムでは、そのとおりです。しかし、この議論は雇用の概念を誤って解釈したものです。「市民給与」(ベーシック・インカム制)によって、応募者全員が仕事をバランスよくシェアするといった新しいシステム思考をおこなえば、こういった雇用の問題を公平なやり方で解決することができます。私の書いた「持続可能なグリーン・トランジションのジレンマと解決策」International Journal of Technology and Globalisation Vol. 7, No.4, 2014をご覧ください。
経済成長が必要だとする別の(誤った)議論は、「経済成長はさらなる公平性を促進する」という主張です。現実世界の経験は、その正反対を示しています。経済的・社会的な公平性を創り出すためには、上述した私の論文などで説明している、異なる社会政策が必要なのです。

Q. 経済成長を続けることは可能ですか? それはなぜですか?

従来型のGDP成長を続けると、気候に関する壊滅的な影響が生じることでしょう(上記の回答をご覧ください)。必要なのは、世界中のすべての国家の間で、世界の富をもっと平等に分配することです。これは実際上、発展途上の国々が今よりも高い人並みの生活水準に対する優先権を最初に得るべき、ということです。豊かな国々は先頭に立って、わずかしかない資源をより多く使うことなく、楽しく幸せな暮らしが送れるという可能性を実証すべきです。この質問に関しては問いの7でもお答えしています。

Q. 経済成長を続けることに伴う犠牲や不利益はありますか、もしそうだとすれば、それは何ですか、なぜ生じるのですか?

この質問にはすでに答えましたね。

Q. あなたの国がこれまで経済成長を続ける中で失ったものがあるとしたら何でしょうか?

デンマークの社会は「競争状態」になりつつあります。支配的なネオリベラリズム的な経済と従来型の経済成長への欲求のために、ストレスを抱えた人々が増え、望んでいない失業が生じているのです。

Q. 「経済成長」と「持続可能で幸せな社会」の関係はどうなっていると考えますか?

経済成長についてはネオリベラリズム的な概念が主流ですが、これは「持続可能で幸福な社会」とは矛盾したものです。賢明な国々が先頭に立って、「バランスのとれたゼロ成長構造を持ち、意に沿わない失業がなく、すべての国民にとっての高い経済的・社会的公平性や安全、福祉、そして国民が(控えめの)市民給与に基づいて自分自身の暮らしを営むことのできる自由がある社会とは、どのような望ましい特徴があるのか」を明らかにしてくれることを願っています。もしかしたら、北欧諸国や日本が先陣を切って進めるかもしれませんね?


インタビューを終えて

世界の持続可能性の専門家ネットワーク、バラトングループのシニアメンバーであるニールスは、研究の傍ら、実世界でも、環境を守り、持続可能な社会を作るための闘いを繰り広げてきたことで知られている、この分野の世界の第一人者の一人です。 「経済成長を求める大きな理由」のひとつである失業の問題には、負の側面が多い経済成長よりも、ベーシック・インカムをベースとした、バランスのよいワークシェアが有効であるという意見(単なる意見ではなく、研究と分析に基づく提言)には、耳を傾ける必要があります。
ニールスは、ここで紹介した自分の論文「持続可能なグリーン・トランジションのジレンマと解決策」International Journal of Technology and Globalisation Vol. 7, No.4, 2014を、もし興味のある人がいればどうぞ、と預けてくれています。ご興味のある方は事務局までご連絡下さい。

取材日:2015年3月13日


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