100人それぞれの「答え」

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東京成徳大学名誉教授

深谷 昌志(ふかや まさし)さん

オーバーに言ったら、30代頃は男女とも育児休暇で良い

長い人生を送ってきましたが、経済について、考えることのない生活を過してきました。株価とまったく無縁の人生で、株券を見たこともありません。そうした者のコメントですので、熊さんの床屋談義のレベルですが、それも一興かもしれません。

Q. 経済成長とはどういうことですか、何が成長することですか

しあわせな人生を送れる人が多くなることでしょう。経済的な貧しさのために、多くの人が苦痛に満ちた人生を送ったのが日本の近代だったと思いま す。

Q. それは望ましいものですか、それはなぜですか

中近東の産油国などの発展を見ていると、富が少数の富裕層に独占されていますね。そうした状況を目にすると、富の配分がうまくいっているという条件のもとで、望ましいといえるように思われます。

Q. それは必要なものですか、それはなぜですか。必要な場合、いつまで、どこまで、必要でしょうか

40数年前から、海外の教育事情の調査を始めました。ソウルや北京も貧しい時代です。小学校は3部授業で、その学校へ行けない子が町に溢れていました。貧しさは人を委縮させます。それだけに、経済成長を大事に考えたいですね。

Q. 経済成長を続けることは可能ですか、それはなぜですか

石油などの資源の豊富な社会なら、持続的な成長を期待できそうですが、日本のように資源的に貧しく、人々の意欲が発展を支えてきた社会の場合、人々が劣化すると発展は急速に止まると考えられます。意欲的で創造性に富む人材をいかに養成できるかに、発展の可能性が係るでしょう。

Q. 経済成長を続けることに伴う犠牲はありますか、それは何ですか、なぜ生じるのですか

人間は弱いものです。特に、経済のトップに位置する人たちは、きちんとした使命感を持っていないと、利己的になり、門閥を大事にし、富の独占に走りがちです。そうしたトップ層の腐敗は、多くの貧しい層を産みだします。

Q. 日本がこれまで経済成長を続ける中で失ったものがあるとしたら何でしょうか

近代の日本のトップ層は、欧米に対する危機感と士族的で禁欲的な態度で、日本をリードしました。(他国と比べ、相対的に)身辺の清潔さを感じます。そして、敗戦後のリーダーも庶民的なバイタリティで日本をリードしました。しかし、近年、豊かさに慣れ、初心を忘れたリーダーを感じます。「売家と 唐様で書く 3代目」で、現在から未来にかけての不安を感じます。

Q. 「経済成長」と「持続可能で幸せな社会」の関係はどうなっていると考えますか

経済発展のモデルを替えることでしょうね。少子高齢化社会の到来を考えると、

①高齢者が75歳まで働ける社会システムを開発することでしょう。 65歳で線引きし、あと10年+α、新しい就労の形を模索する必要があるでしょう。

②若い世代の子育てを社会的に保障する制度の構築でしょう。ある時期を子育て期とし、その後、社会参加するシステムを開発することでしょう。女性の労働力化を目指して、女性の輝く社会などというのは、古臭い発想ですね。オーバーにいったら、30代頃は男女とも育児休暇で良いと思います。


インタビューを終えて

「レジリエンス」の研究から、長年子どもや教育現場でのレジリエンスに取り組んでこられた深谷先生とお近づきになることができ、インタビューにもお答えいただくことができました。

そういう先生だからこそ、「貧しさは人を萎縮させる」から「富の分配がうまくいっているという条件での経済成長」の大事さをお話しくださいました。そして、特に日本では、その基盤は「意欲的で創造性に富む人材の養成」である、と。

経済モデルを変えることの重要性のなかでも、子育てを社会的に保障すること、「オーバーにいったら、30代頃は男女とも育児休暇で良いと思います」という指摘にははっとしました。

経済成長にも「社会のレジリエンスを強化する経済成長」と「社会のレジリエンスを損なう経済成長」があるのだと思いました。その違いが如実に現れるのが、先生のご専門の「子ども」なのだろう、と。いろいろと考えさせられました。ありがとうございました。

取材日:2015年6月6日


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