100人それぞれの「答え」

写真:セヴァン・スズキさん

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環境問題活動家

セヴァン・スズキさん

私たちは一歩離れて、「経済は私たちのために働いているのだろうか? それとも、私たちが経済のために働いているのだろうか?」と考える必要があります

Q. 経済成長とは何でしょうか?

そうですね、私は経済学を勉強したことがないので、適切な言い方を知っているかわかりませんが、私が理解する範囲では、経済の相互作用が増えるほど、お金の交換や循環が増えます。事故が増えれば、救急救命士、医者、医療従事者、弁護士、警察の雇用が増えます。今のかたちの経済成長は、人間の幸福に寄生して実現されていると思います。

Q. 経済成長は望ましいものでしょうか?

すべての政府が経済成長を熱望しています。私たちは極端な繁栄の時代を経てきました。誰も見たことがないほどの繁栄でしたし、今後も見ることがないでしょう。なぜなら、資源の破壊は未来からの先取りで成り立っており、未来から奪われたものだからです。それは取り戻すことはできません。政府が目指したことであっても、筋が通っていません。もうつじつまが合わなくなってしまったのです。

──しかし、一部の、あるいはたくさんの人々が経済成長は必要だと言っています。

自分たちの人生や職業がこのパラダイムの上に築かれているからです。でも、いつこのパラダイムが始まったのでしょうか?

現在の経済の形態は第2次世界大戦後に作られたものだと聞いています。世界が1940年代から大きく変わったにも関わらず、同じしきたりなのです。今の状況に照らして作られたものではありません。GDPは繁栄を測るためのものでも、社会の進歩を測るものでもありませんでした。しかし、今はGDPがその物差しになっています。私たちは一歩離れて、「経済は私たちのために働いているのだろうか? それとも、私たちが経済のために働いているのだろうか?」と考える必要があります。なぜなら、今、私たちは経済のために働いているからです。

Q. 経済成長は必要なものですか? 続けることは可能でしょうか?

終わりのない経済成長はありえません。私が学んだ生物学と生態学の視点に立ち、すべての源である自然を見れば、何らかの反動なく永遠に繁栄することは不可能です。がん細胞に例えられることがあります。細胞は成長を抑制することができなくなると、がんになり、増殖し続けます。経済成長を続けることは、不自然であり、持続不可能です。なぜなら私たちは有限の世界に住んでいるからです。

Q. 経済成長はどのような犠牲をもたらしてきたのでしょうか?

地球で6回目の大量絶滅が起こりつつあると言われています。これまでありえなかった暴風雪、数千人の死者を出すハリケーン、生存が脅かされる小さな島国の人々。気候変動は、長い間私たちが「何が大事か」を大きく曲解してきたことが引き起こした症状の一つです。

ですから、私たちは"人間の価値"へ戻らなければなりません。個人として望む良識を取り戻すのです。

Q. 持続可能で幸せな社会をつくるためには、経済成長をどのように位置づけたらよいとお考えですか?

人々はまさにこの質問について考えなければならないと思います。私はカナダの経済学者と一緒に取り組んでいるのですが、個人的には、私たちは、大きな照明のスイッチが消えるのを待っています。経済成長のパラダイムから、定常型でゼロ成長の経済への移行です。

でも......そうはならないと私は思います。みんなが気候変動に目覚め、化石燃料への依存をやめるとは思えないからです。スイッチが切り替わるようにはいかないでしょう。地道に少しずつ進んでいくと思います。さまざまな方向へ進むかもしれません。私たちは今、モノカルチャーの時代に生きています。食料、作物、文化だけではありません。経済もそうです。今の経済は、堅固で変化しにくく、いかなるショックに対しても脆弱です。私たちはこのいわゆる"脆弱な鉄格子"から抜け出さなければなりません。そして新しいかたちの経済を構築し、促進するのです。

経済とはそもそも、人間同士が交換するという行為です。さまざまなかたちの経済があるはずです。そして、すでにさまざまなかたちで始まっています。私の故郷のバンクーバーでも、新しい食料経済が生まれています。作物を自分で育てる人がいます。モノやサービスを買うのではなく、インターネットで共有することも始まっています。お金に依存しない小さなネットワークもあります。こうしたことが始まっているのです。これらを公的なものにする必要があるかはわかりませんが、促進し、奨励する必要があります。こういったものがたくさん必要です。そして、次に何が起きるかは、誰にもわかりません。


インタビューを終えて

1992年、リオでの地球サミットで、12才のセヴァンが行ったスピーチは本当にすばらしいものでした。今でも世界中の人々に大きな影響を与え続けているセヴァンの問題意識は鋭い!と思いました。と同時に、最後に語ってくれた"希望の持てる取り組み"、ぜひ広げていきたいと思います。

取材日:2014年2月12日


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