100人それぞれの「答え」

写真:春日 隆司さん

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北海道 下川町 環境未来都市推進本部長

春日 隆司(かすが たかし)さん

下川町では、地域をベースとしてここ数年取り組んできたことによって、地域経済が回りだしている

Q. 経済成長とはどういうことですか?

農山村からのまちづくりの視点でいくと、基本的には、「成長」という言葉ではない、と思っています。「成長」というのは大きくなる、伸びていくようなところがあると思いますが、置かれている社会情勢からすると、「成長」ではなくて「発展」であり、いかに進歩・進化するかということでしょうか。人類の思考は質が高まり成長していくと思いますが。

Q. それは望ましいものですか?

人類が成長する、これは望ましいですね。もちろん、ハートが成長するということですが。

Q. それは必要なものですか?

「成長」という言葉を「発展」とした場合、地域の資源がありますから、それを活用しての成長・発展というのは必要だと思います。人々の進化も伴っての成長ですけれども。

Q. 経済成長を続けることは可能ですか

「成長」といった場合、下川町の場合、そこに土地があるわけで、それをいかに望ましい姿で次の世代につなげるか、ということですね。

Q. 経済成長を続けることに伴う犠牲はありますか

これはカーボンオフセットと同じような考え方で思っています。基本的には、いろいろな意味で「質を上げながら、削減する」。「内へ、内へ」質の向上の経済って、あると思います。これは精神論になるかもしれませんが。シンク・グローバル、アクト・ローカルでしょうか。内なる成長、内なる質の向上が必要だと思います。

Q. 日本がこれまで経済成長を続ける中で失ったものがあるとしたら何でしょうか

失ったとすると、僕らの地域からすると、「地方・資源」ですね。地方にあった資源、人材。それがあっての日本経済の成長でした。下川町の場合、特に森林や鉱物資源があったわけですが、それらは日本の高度経済成長に極めて重要な意味を持っていたと思います。

下川町は、日本の縮図的なところがあって、犠牲ということなら犠牲になったのですが、今現在、その中から立ち上がって、資源が造成されて、「再生」ではなく、さらに再興する。「再生」というのは、死んでいる状態から生き返るような感じがあります。

Q. 「経済成長」と「持続可能で幸せな社会」の関係はどうなっていると考えますか

経済は「経世済民」という考え方だと思います。当然ですけど。でも、経済というのはお金のように思われている。もう少し「経世済民」、お金だけでなくて、そこに生活の質だとか、そういうものがあってすべて経済という考え方でいくなら、経済発展は必ず必要だと思います。

「経済成長」というよりは、「持続・維持可能な地域社会をつくっていく」こと。質を高めるということでしょうか。

と同時に、僕が一番思っているのは、若い子どもたち、これからを担う人たちに、できるだけ早く見ておかなければいけない、感じておかなければいけないフィールド、または条件というものを提供するのが僕らの役割であるということです。できるだけ早いうちに先行経験をさせる。「三つ子の魂」じゃないですけど、そういうところをしっかり次の世代に提供する役割があると思っています。そうすると、感受性も感性も豊かになる。

すべては感性で物事が動くような気がします。いろいろ考えて判断するのですが、人間の行動って、最終的には感性で動いちゃうところがあるので、その感性をできるだけ早くつくり上げるのが、僕らの極めて重要な役割だとも思います。

Q. 経世済民的に経済をとらえて話して下さいましたが、世の中では、今でも「GDP何%」とか、「アベノミクス」とか、多くの企業が「史上最高益」とか、いわゆるお金で測る経済成長の話ですよね。そういうのは、下川町から見るとどのように見えるのでしょう? 自分たちとはあまり関係ない?

そうですね。下川の場合は、地域をベースとしてここ数年取り組んできたことによって、地域経済が回りだしている、質を高めようとする動きがある。そういう面では、国の動きがどうということはあまり感じないかな。

Q. 自分たちで大事なものを育てて、守っていくという。

ただ、今言われているアベノミクスや地方創生も、基本的には、当然ですけど、自分たちの主体性や意識、自立性があってはじめて地域創生に結びつくわけですから、お金だけ来るとか、仕組みをつくってもらうとか、規制を緩和するということでなくて、根本的なところは自分の立ち位置、主体性や自立性をいかに持てるかということです。地方創生はそのきっかけでもあると思います。


インタビューを終えて

環境モデル都市、環境未来都市のひとつとしてしっかりした戦略を持った地域づくりに早くから取り組んできた下川町の"原動力"のおひとりの春日さんには、下川町におじゃましたときにも熱い思いと冷静な戦略の数々を聴かせていただきました。お会いするのは3年ぶりですが、下川町の地域経済が回りだしているようす、素敵だなあと思います。だからこそ、「アベノミクスや地方創生といった国の動きがどうということはあまり感じない」と言うことができるのでしょう。国の経済成長のトリクルダウンを期待して待っているのではなく、自分たちの足で立つ地域の好例のひとつだと改めて思いました。

取材日:2014年11月27日


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