100人それぞれの「答え」

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ブライト・グリーン・ラーニング創立者・代表、前IUCNラーニング&リーダーシップ・オフィサー

ジリアン・マーティン・ミアースさん

モノや情報が多すぎると、思考の整理も難しくなりますが、その人にとっての適正量が分かることが「幸せ」に結びつきます。

Q. インタビューをお受けいただきき、ありがとうございます。経済成長とは何でしょうか?

お話しする機会を与えていただき、ありがとうございます。

経済成長は、その言葉が示すとおりですね。 経済の成長であり、生産の拡大であり、多くの人々がGNPの数値に添付するさまざまな数字の増加です。私の答えはとてもシンプルで、「生産と消費と経済の数値の恒常的な増加」です。

Q. それは望ましいものですか? 望ましいものであれば理由をお聞かせください。

言うまでもなく、誰と話しているかによって異なります。

多くの人々にとっては、重要なものだと考えられています。さまざまな公約をすることによって選出される政治家たちはもちろん、雇用と自分たちが働く企業の売上に関心がある有権者も、言うまでもなく経済成長を望ましいものと考えます。経済成長を中心としたさまざまな部門で多くの欲望があります。

私が所属するコミュニティでは、現行のシステムは経済成長の上に成り立っていると考え、そこに問題があると考えています。しかし私は、単なる経済成長ではなく、新しい発展のあり方に関するほかのパラダイムを検討することは興味深く、重要で、絶対不可欠だとさえ思っています。私自身は、学習の分野で成長に取り組んでいます。そこでは、成長を探求することは可能だし、成長を学ぶ方法もありえます。

Q. 経済成長は必要でしょうか?

現行のシステムは、経済成長や金融制度や生産システムなどを前提かつ必要なものとして、それらを中心に築かれています。「必要か?」という質問については、誰と話していて、どのように見るかによって異なります。現行のシステムを継続して運用するためには必要です。

しかし私は、持続可能性を追求する運動に取り組むほかの人たちと一緒に、「ほかにどのような種類のシステムが構築可能なのか?」と自問自答しています。恒常的な経済成長を際限なく必要としないシステムです。

私たちは自然資源の限界を研究しており、その限界については私たちの誰もがよくわかっています。そうした制約があるという理由だけで、「経済成長は永遠に続くものではない」ということが言えます。経済成長に依存している現行のシステムが、経済成長のダイナミクスにそれほど依存しなくてすむように、どうやって修正・改造できるかが問題です。 

Q. 経済成長を続けることは可能でしょうか?

経済成長を続けることは不可能です。

Q. それはなぜですか?

先ほど言った「限界」があるからです。

今、経済成長を自然資源からデカップリングすることを目指す、多くの興味深い実験や研究があります。なかには、完全なデカップリングも実現できるという見込みもあります。そうした研究では、地方や地域での実例を見つけている研究者がいます。

私は、それは間違いなく素晴らしいアイデアだと思います。でも、本当に実現するかどうかはまだ分かりません。「地球には限界がある」という純粋な現実から、永遠に続けることは不可能なのです。

Q. これまで続いてきた経済成長によって、犠牲やデメリットが生じているでしょうか? どのようなものでしょうか?

多くの自然資源をどのように利用するかについては、銀行口座からお金を引き出すことにたとえたとしたら、私たちの口座はすでにマイナスになっています。その影響が見え始めているところもあります。このまま進むとそうした影響はより恒久的なものになるでしょう。モノの供給などの分野では、途絶も発生するでしょう。

以前のように安価ではない、大量の化石燃料や特定の金属や鉱物に依存するさまざまな部門の人々に対して、成長モデルが問題を引き起こし始めていることは人々の目にも明らかになってくると思います。現時点では、そういったことは、互いにつながっていなくて、単発の出来事に見えていたとしても。したがって、利幅や投資利益率という点からも、生産モデルに問題が生じ始めるでしょう。

Q. ジリアンの国で、経済成長が続くことによって失われたものはありますか? あるならば何でしょうか?

どうでしょうね。私は楽観主義者で、どちらかというと人々の中にある創造性に目を向けるタイプですから、失われたものについて考えることはむずかしいかな。

古いパラダイムを信じる人たちは、これまで通りの経済的手段がないことについて喪失感や絶望を味わっているかもしれませんし、そうした状況は続くでしょう。しかし、そうした人たちと一緒に生きている創造的な人たちは、興味深い対処方法を思いつくことができるでしょう。

Q. 「経済成長」と「持続可能で幸せな社会」との関係についてどう思いますか?

多くの人が、「持続可能で幸せな社会にとって、経済成長は必要なものだ」と考えていると思います。その考え方は理解できますし、気持ちもわかります。

ただ、私たちには「自然資源の限界」という現実があるという一点だけからも、経済成長が続くと、最終的にはあまり幸せではない社会になってしまうと考えられますし、すでに長期的には持続可能ではないものを作り出しています。これも感じ方の問題かもしれませんね。

持続可能性に取り組む人たちは、人々が経済成長と消費を幸せと結びつけるパラダイムや感じ方を変える手助けをしようとします。あなたの主宰する幸せ社会経済研究所が取り組むべき課題や仕事がたくさんあると思います。

多くの人たちのライフスタイルはすでに、大量消費と絶え間ない経済成長には基づいていないと思います。喜びや個人の成長など別の種類の成長を見出すことができる人がますます増えていくでしょう。健康なライフスタイルを維持するために必要なものを持ちつづけていれば、私たちはみんなもっと幸せになり、私たちが未来に必要だと思っている「より持続可能なパラダイム」に近づいていくと思います。


インタビューを終えて

ジリアンは、世界の持続可能性やシステム思考の研究者・実践家のネットワークであるバラトングループを支え続け、引っ張り続けてくれているメンバーです。国際機関や企業などで、学びを主軸としたワークショップや研修などで、組織開発や人材育成、実際のプロジェクト促進などを通して、持続可能な社会づくりに国境を越えて飛び回って活躍しています。

「地球の限界」から経済成長を続けることは不可能であり、別の幸せを見出す人が増えるなど、シフトは始まっている、との見立て、大いに共感します。

取材日:2014年12月15日


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