100人それぞれの「答え」

竹内 一公さん

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株式会社竹内電設 代表取締役社長、一般社団法人柏崎青年会議所会員

竹内 一公(たけうち かずまさ)さん

お金の意味での経済成長も、私たち地方は必ず達成しなければならない。

Q. 経済成長とはどういうことでしょうか

初めて経営を学ぶ時に、「経済とは何でしょう」というお話を先生からいただいたのを思い出しました。今広く使われている「エコノミクス」と、日本語で言う「経済」というのはまったく違うんだ、と。

「経済」というのは、昔の中国の古事にある「経世済民」――世を経(おさ)め、民を済(すく)う――を福沢諭吉が「経済」として訳したのが語源だということを学びました。世の中をより良く導こうとする、仕組みをつくろうとする意思が「経済」ということなのだと思います。

なので、欧米型のエコノミクスと違って、日本の場合は、「より良く生きようとする」とか、私は経営者になったので、経営者として、社員やその家族、うちの家族を、良い生活、より良い生き方ができる方向に導くためのリーダーシップを取ることが経済であり、それをより高めていくことが経済成長だと思います。

Q. 経済成長は望ましいものでしょうか?

望ましいことですね。必ずしていかなければならないものです。柏崎や地方にしてみると、"エコノミクス"の成長も大変大きな課題であるとも思います。今、「東京一極集中」などと言われていますが、ニュースなどを見ると東京の話題であふれていて、経済の循環ができているようにも見えるけれども、日本全体で見ると、そういう状況ではないと思います。

お金が回らないと、福祉や教育といった方向にもお金が回らなくなっていきますよね。そうしたときに、都会と地方の格差は、もう少し問題にされるべきです。お金の意味での経済成長も、私たち地方は必ず達成しなければならない。

Q. お金の意味での経済成長、例えばGDPで測るとか、どれぐらいお金が回っているかという、それも。

地方にとってはすごく大切です

Q. それは必要なものかと言うと必要なものですね。

必要です。

Q. 「地方に必要だ」とおっしゃったとき、どこまでも必要なのか。いつまでどこまで必要でしょう。

「経世済民」で言うと、どこまでも追求しなければならないと思います。

人間の欲って果てしないと思うので、終わりはないのだろうけれども、自分が取りあえず幸せであると実感した人たちは、たとえば今の日本もそうですけど、募金だとか海外支援だとか、昔より積極的ですよね。経済成長を通じて、そういうマインドが育ってきたということじゃないでしょうか。

それぞれの国や地域、われわれ最少のコミュニティも、果てしなく、経済成長というか、より良く生きる方法に関しては、追求しなければいけないでしょうね。

Q. 地域にお金が回るという意味での経済成長、格差の話をされていたと思いますが、たとえば柏崎は、東京などに比べるとまだ経済的な格差があるとして、柏崎の、お金が回る意味での経済を成長させないといけないとしたら、いつまで、どこまでなのでしょう。

僕もまだ経営者になりたてなので、ちょっとわからないですけれども、お金って、より良いサービスや技術を提供できた対価なので、今のところ、僕にとっては、「いつまで」とか「どこまで」というのはまったくないですね。より良い技術やサービスを広めるしくみができたなら事業を拡大して、上場して、より良い生き方をより多くの人たちに提供したいとすら、大それていますけど、考えたいという思いがあります。

そういう意思というか、経済成長を通じたより良い生き方の提供といった理念まで、経営者に限らず、みんなが持てたときに、柏崎や地方も、より良い地域、格差を感じない地域になっていくんだろうなと思います。

Q. より良く生きるという意味での経済の成長と、お金が回るという意味でのGDPなどの成長の話がありましたが、経済成長を続けることは可能でしょうか

お聞きになりたいこととずれていると思いますが、「可能かどうか」ではなくて、哲学的なのかもしれないけど、「より良く生きることをあきらめますか」という質問と一緒だと思います。あきらめたら、そこで本当の幸福は実現しないんだろうなと思います。いつまでも続けなきゃ駄目ですよね。

Q. ここでの経済成長は、GDPが大きくなるという意味も含めてですが、経済成長を続けることに伴う犠牲もあるのでしょうか。あるとしたらどういうものでしょうか。

僕ら世代は、高度経済成長時代のちょっと後に生まれて、より生活が豊かに、楽になっていったり、すき間風の入らない家に住むようになったり、おやじの車はちょっとずつ良くなっていって、という中で生きてきました。

大学卒業の時、2002年なので、就職超氷河期と言われたのかな、その時に経済の縮小の怖さを知りました。柏崎に帰ってきて、リーマンショックが起き、そこでも経済の縮小の怖さを知って。

そういう時に、うちではなかったけれども、近くの建築屋さんでも大量のリストラが発生して、ということが起きているので、「経済成長のまずさ」というのは、僕は意識したことはないです。むしろ、「GDPの縮小」というのはすごく怖いことだと思います。

Q. 「経済成長」と「持続可能で幸せな社会」の関係はどう位置づけられるでしょう

日本における「経済」は、それぞれの経営者だったり、それぞれの個人の感覚の中に、「経世済民」というのがある。日本人はすごくやさしくて、人のことをおもんばかる。うまくいかないことがあれば改善マインドを持って臨む国民性の中で、「経世済民」という言葉は必ず生きていると思います。

こういう社会において、持続可能で幸せな社会を目指そうというマインドは確実に、世界のどこにも先駆けて、日本はあると思います。日本が、そういう意味での経済成長をあきらめる必要はまったくない。

ただし最近思うのは、特に金融経済に関して思うのですが、僕ら電気屋さんは、電気工事、特に製造業の電気に携わっていて思うことがあります。電気に限らずですが、たとえば、投機目的で、銅価格が高騰して電線価格が跳ね上がったり、原油価格が高騰してエネルギーの供給を乱してみたり。実業に関係ないところで、そういうリスクがある今のアングロサクソン型のエコノミクスは、間違いを多くはらんでいるんだろうなと思います。

それこそ、日本型の経済成長を世界に輸出するぐらいになるといいなと思っていますし、その古事を生んだ中国などは今、すごくおかしな状況になっているわけだけれども、思い出して、世界がうまく回る仕組みを、みんなで考える社会になったらいいなと思います。こんな地方の弱小の、零細の若社長が言うのもおかしな話だけれども。

Q. 最後に、竹内さんの「経世済民」の「良く生きる」という意味の経済と、アングロサクソンなり金融経済の、お金がお金を生むような、アベノミクスのような世間一般で言う経済成長との関連を教えて下さい。竹内さんにとって、「より良く生きる」ことが追求できれば、GDPは増えなくても構わないのか、つまり、GDPをどこまで増やし続けるということがないと「より良く生きる」ということはできないのか、その関係性はどのようにお考えですか?

僕は、アベノミクスって、すごくよい政策だと思っています。安倍首相は、マネジメント能力がある。「目標による管理」は経営手法の中にあるわけですが、国民を一定の方向に向かせて、そこに向かってみんなで頑張ろうとするマインドを育てるためには、数値目標というのが一番効率的な手法だと思います。

昔は、「所得倍増化計画」というのがあったじゃないですか。「列島改造計画」とか。そこまでいくと相当な弊害も伴ったのでしょうけど、最近で言えば、どちらかと言うと、停滞している経済の中で――しかも、日本が国際競争時代にさらされた中で、誰も守ってくれない時代が続いたわけです――、アベノミクスのリーダーシップや目標による管理などは必要ではないでしょうか。

日本や日本の企業が自信を取り戻すことは、「経世済民」のマインドを復活させるでしょう。それが世界に対しても役立つ。日本の企業などは、中国、インドなど海外に出ていったときに、現地の人の使い方を見ても、欧米型の企業より現地の人たちのことをずっと細かくつぶさに見ていて、対応しようとしているじゃないですか。こういう心のありかたはすごく大切だろうし、アベノミクスのGDP何%成長や数値目標は、日本がその目標の先にある日本人らしさを取り戻すことや、よりよい生き方を目指す意味においては非常に重要なことだと思います。

私たち地方の若者たちがアベノミクスの呼びかけにしっかりと応え、目標を持ち、力を合わせてより良い社会を作ろうという意志が必要だと思います。


インタビューを終えて

柏崎市の若手経営者のおひとりである竹内さんとは、「明日の柏崎づくり事業」で3年間ご一緒させていただきました。今回のインタビューでも、「地方の視点」を改めて教えていただいた気がします。特に、「縮小の怖さ」を何度か体験されたことが、経済や成長に関する価値観や思いに大きな影響を与えたのかもしれないと思いました。
「アベノミクスのGDP何%成長や数値目標は、日本がその目標の先にある日本人らしさを取り戻すことや、よりよい生き方を目指す意味においては非常に重要なこと」という視点は、自分にはなかったので、改めて考えさせられました。ありがとうございました。

取材日:2015年2月19日


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