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Case.1

「半農半X」

「半農半X」

塩見直紀(半農半X研究所)さん

「半農半X」というライフスタイルが、近年注目されています。これは、京都府綾部市在住の塩見直紀氏が1990年代半ば頃から提唱してきたライフスタイルで、自分や家族が食べる分の食料は小さな自給農でまかない、残りの時間は「X」、つまり自分のやりたいこと(ミッション)に費やすという生き方です。農のある暮らしをしながら、自分が大切だと思うこと、大好きな仕事をすることで、精神的に満たされるというこの半農半Xという暮らし方は、収入が減少しても心豊かな暮らしをしたいという人たちから共感を集めています。特に20代〜40代が関心を示しているといわれています。

「X」にあたる部分は人それぞれ。農的生活をしながらNGOで活動する「半農半NGO」や、「半農半ライター」「半農半歌手」「半農半保育士」などさまざまです。塩見氏の著書『半農半Xという生き方』(ソニー・マガジンズ新書)にも、半自給的な「小さい農」を営みながら、自分が大好きで、心からやりたいと思うことをやっている人たちがたくさん紹介されています。

 たとえば、高齢化が進む町で米作りをしながらヘルパーの仕事をしている方。ヘルパーが不足している過疎の町村では特に必要とされ、「自分の好きなことが社会の役にも立つ」と生きがいと喜びを感じながら暮らしているそうです。また、得意な英語を活かし、映画の字幕翻訳の仕事をしながら、近所の子どもたちに英語を教えている40代の方もいます。「暮らしのベースにあるのはあくまで『農』で、そのうえで自分に与えられた使命を尽くせばよい」という半農半Xの考え方に出会い、「自分の存在に自信を持てるようになった」といいます。そのほか、築100年を超える広い古民家で、田舎暮らしの体験希望者を受けている70代の女性、得意の蕎麦ぼうろづくりの腕を活かして教室の講師になった80代の女性など、生き生きと暮らす高齢者たちもいます。それぞれが、半農半Xを通して魅力的な暮らしを実践しています。

 生活費を稼ぐだけの生き方ではなく、大好きなこと、大切だと思うことをしながらイキイキと暮らしたい、自分の得意なことを社会に役立てたい、天職を見つけたい、と願う人は多いでしょう。「自分の時間の半分を使って自分や家族の食べ物を作るための農業(自給農)をやり、残りの半分の時間で、自分がやりたいこと、やっていきたいと思っていることをやろう」という「半農半X」という生き方は、そうした人たちにとってひとつの大きなヒントになるでしょう。

 

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