経済学を見直そう!――リーマンショック後の経済学を変える世界的ネットワークの広まり
経済危機をきっかけに、これまでの経済学の学び方を見直す動きが世界各地で広がっています。その一つが、2013年に英国の経済学の学生や思想家らが立ち上げた団体「経済学の再考(Rethinking Economics)」です。
経済学の分野ではいわゆる新古典派が主流とされています。当時、オックスフォード大学のベリオール・カレッジ経済学部の学生だったユエン・ヤンさんは、2008年の秋に大学の外で世界市場の崩壊が起きているにもかかわらず、講師らがほとんど目を向けなかったことにショックを受けました。教室で教わる現代マクロ経済学と現実世界の問題に大きな隔たりがあると気づいたのです。他にも大学で学ぶ内容は"数学的な問題"ばかりで、経済思想の歴史や政治を学ぶ機会がない、一方的に講義を受けるだけで、議論する場が与えられていないことなどを問題視する声が上がっています。
こうした現状を踏まえ、ユエン・ヤンさんは「経済学の再考」を設立し、世界中の大学で経済学の教育課程の改革を目指す運動を起こしました。具体的には、新古典派だけではなく、歴史的・世界的背景における多様な学派があると学生に認識させること、さまざまな経済理論を支える哲学、政治、倫理の基礎を講義やセミナーで率直に議論すること、実社会の出来事や政策とつながる経済学を教えることなどを要求しています。
活動の一環として2014年9月には、ニューヨークで会議を開催。登壇者にはマイケル・サンデル教授やポール・クルーグマン教授などの著名な学者が名を連ねています。
「経済学の再考」のネットワークは、英国、ドイツ、フランスなどの欧州をはじめ、米国、カナダ、アルゼンチンなどの北南米、中国、インドなどのアジアにも拡大しています。