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Case.19

市民による市民のための借金救済、「ローリング・ジュビリー」プロジェクト

米国で経済的格差に抗議してウォール街を占拠したデモを発端に、格差の解消に向けたユニークな活動が生まれました。医療や教育といった基本的ニーズを満たすのに借金に追い込まれた人たちを救うために、市民から募った資金で債務を無効にする取り組み、「ローリング・ジュビリー(Rolling Jubilee)」プロジェクトです。

ローリング・ジュビリーは2012年、ウォール街占拠デモの活動団体「ストライク・デット(Strike Debt)」によって開始されました。ストライク・デットはウェブサイト上で、ウォール街と市民の負債との関係について次のように述べています。「負債は99%の人々を縛りつけている。賃金の停滞、全体に及ぶ失業、公的サービスの廃止によって、われわれは基本的に生活に必要なものを手に入れるために借金を余儀なくされ、ひいてはわれわれの将来を銀行に引き渡している状態だ。ウォール街によって人々は孤立し、屈辱を感じ、恐れを抱いている。負債はそのウォール街の利益と力の主要な源となっている」

ローリング・ジュビリーのプロジェクトは、「銀行が債権回収業者の投機的な闇市場に債権を安価で売り渡し、債権回収業者が今度は債権者から全額を回収しようと試みる」ことに異議を唱え、こうしたやり方で利益を得ている市場に介入するために、回収業者の手に渡らないよう債権を買い上げ、債務を無効にするという手段を講じています。これは米国で行われている債権の転売のしくみを巧みに利用したもので、銀行は債権の回収不能による損失を抑えるために、非常に安い価格で売却するので、債権1ドルあたり数セントで買い上げることができるといいます。

ストライク・デットがまず注目したのが医療費債務でした。同団体のウェブサイトによると、米国で自己破産に陥るケースの62%が医学的疾患の治療費を支払えなかったことが原因とされています。そこで、ストライク・デットはローリング・ジュビリーの基金を募り、プロジェクトが開始された1年後には、135万ドル相当分の医療費の債権を買い上げ、2,693人を借金から開放することに成功しました。現在までに約140万ドル相当の債務を無効にしています。

また、米国では学費ローンが支払えなくなった学生が抱える借金が年々増加しており、債務は総額1兆円を超えるといいます。ストライク・デットはこの問題にも取り組み、これまでに学生9,438人の学費ローンの負債(約130万ドル相当)を帳消しにしてきました。

ローリング・ジュビリーでは現在、約70万ドルの基金が集まり、3億2,000万ドル相当の債務を無効にしています(これらの数値はローリング・ジュビリーのウェブサイトで随時カウントアップされています)。同プロジェクトが掲げる目標は、負債をより効果的に阻止できる方法を用いてこうした活動を広め、最終的には1%の富裕層だけのための経済ではなく、すべて人々が恩恵を得ることができる経済を構築することです。

 

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