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Case.24

「Fight for $15」最低賃金引き上げ運動

米国では最低賃金をめぐる動きが活発になっています。2016年になって、カリフォルニア州とニューヨーク州で最低賃金を時給15ドルに段階的に引き上げることが決定しました。その流れを作り出したのが、市民運動「Fight for $15(15ドル のために戦おう)」です。

きっかけはファストフード従業員のストライキ
かつて、ニューヨークにあるファストフード従業員の時給は、低所得者の中でも最悪でした。その状況に耐えかねて、2012年、従業員たちが「時給15ドルへの引き上げと労働組合権」を要求し、1日ストライキを起こしました。このストライキをきっかけに「Fight for $15」運動が全米各地で展開されます。今では、ファストフードだけで なく、空港やスーパーなどで働くさまざまな職種の人々や、彼らを支援する人たちが参加しています。最近では2016年8月12~13日に、バージニア州リッチモンドで数千人のデモ行進が行われました。カリフォルニア州オークランドからデモに参加した教師の女性は「家政婦として週40時間働いても生活ができない人がいる。すべての地域で生活に適した賃金にする必要がある。できれば貧困を撲滅したい。どんなに賢明に働いても生活ができないというのは大きな問題だ」と制度の改善を訴えました。

大統領選挙戦でも議論に
「時給15ドル」が賃上げ運動の目標となっていますが、現状はどうなのでしょうか。連邦政府が定めている最低賃金はおよそ半分の7.25ドルで、2009年から変わっていません。そのため、今秋の大統領選挙戦をめぐって最低賃金の引き上げについて活発に議論されてきました。民主党候補指名争いでバーニー・サンダース上院議員は、時給15ドルへの引き上げを一貫として公約に掲げました。勝利したヒラリー・クリントン前国務長官も低賃金労働者の支援を約束しています。

時給15ドルの実現
高まる最低賃金引き上げの声を受け、州として初めて行動に出たのが、カリフォルニア州とニューヨーク州でした。2016年3月、カリフォルニア州は現在の時給10ドルから15ドルに2022年までに段階的に引き上げることを決定。それに続いてニューヨーク州も、現在の9ドルから15ドルの段階的な引き上げを決めました。ニューヨーク市では2018年までに、ニューヨーク市以外は2021年までに行うことになっています。また、ワシントンD.Cやマサチューセッツ州でも具体的な検討が始まっています。

日本を含め、世界36カ国で同時多発デモ
2015年4月15日、「ファストフード世界同時アクション」の呼びかけで、世界36カ国96都市で賃金引き上げを要求するデモが展開されました。日本でも24都道府県30都市でファストフード店のアルバイトが集い、「時給を1500円にしてほしい」と呼びかけました(毎日新聞2015年4月16日朝刊より)。

今後の最低賃金引き上げの動向に注目
最低賃金引き上げによる影響が景気のマイナス要因になるかもしれないと危惧する意見もあります。しかし、非営利団体の全米雇用法プロジェクト(NELP)の報告書によると、200人以上の経済学者が「2020年までに米国の最低賃金を15ドルに引き上げれば、低賃金労働者とその家族の生活水準の向上に効果があり、経済の安定につながるだろう」と述べています。賃金格差の解決の糸口として、最低賃金引き上げ運動の今後の動向に注目したいものです。

 

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