新型コロナ禍でも社会的弱者を置き去りにしない! カナダの公立図書館の二つの取り組み
(シェアラブルより)
フードバンクの配布場所に様変わりした図書館
カナダのトロント公立図書館が、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために臨時休館して1カ月経った3月末、図書館スタッフが集い、本ではなく、食料品の箱詰めを始めました。食料品を受け取るのはフードバンクの利用者。1日に500~600箱が用意され、九つの図書館の分館で配布されています。
このパンデミックは、フードバンクの活動にも影響を及ぼしました。小さなフードバンクは、高齢の主力ボランティアへの配慮やコミュニティセンターなどの配布場所の休館のため、活動休止に追い込まれたのです。そこで、トロント最大のフードバンク「ノースヨーク・ハーベスト」から相談を受けた市議会は、図書館と話し合って、三つの地元フードバンクと提携し、食料品の配布サービスを始めました。100人以上の図書館スタッフがボランティアで参加しています。配布されるものは缶詰や米、豆、野菜、ヨーグルトなどで、リクエストした家族には新しい児童書も配られます。
「一般的に、図書館は食料配布にはもってこいの場所だ。安全で利用しやすく、人を温かく迎え入れて威厳がある。フードバンクの列に並ぶのはつらいことだ。しかし、人々が助けを求めることは公に認められている。特に今、フードバンクを一度も利用したことがない人が来ている。そんな人たちにも堂々と利用してもらえるよう心がけたい」と、ノースヨーク・ハーベストのエグゼクティブ・ディレクター、ライアン・ノーブルは語ります。
休館中の図書館がホームレスの憩いの場になる
モントリオールの臨時休館中の州立図書館でも、社会的に弱い立場の人に向けた温かいサービスを始めました。さまざまな施設の休業で行き場を失ったホームレスの人たちのために、図書館のスペースを日中のシェルターとして利用できるように開放したのです。
スペース一杯に、社会的距離を保って50脚の椅子が用意され、訪れる人がひと眠りしたり、Wi-Fiを利用したりできる憩いの場になっています。市のスタッフは、利用者が家族や社会福祉機関に連絡を取る手伝いもします。利用時間はたいてい1~2時間ほどで、これまで大きなトラブルは起こっていないといいます。
同州の図書館を統括するケベック州立図書館・文書館の最高責任者、ジーン=ルイス・ロイは、「この図書館には通常、1日数千人が利用し、そのうち少なくとも200~300人のホームレスがやってくる。彼らはほかの利用者と同じように、ここでパソコンを使ったり、仕事を探したり、一息ついたりしている。ここ何年かは一緒にワークショップも行っている。だから、彼らは見ず知らずの人ではない」と述べ、こう続けます。
「(この図書館の取り組みが)パンデミックの最中であっても、この都市では連帯を失っていない、と示す良い例になってほしい。......3~4週間後に、私たちがどんな教訓を得ているか興味深いところだ。でも今は、安全で暖かくて、追い出される心配のない場所にいるときの、人々の顔を見るとただ幸せな気持ちになる」。
助けを必要としている人が増加しているパンデミックの今、この二つの取り組みから、誰も置き去りにしない社会とはどんなものか、改めて思い知らされた気がします。
(佐々 とも)
※この記事は2020年4月にShareableに掲載されたRuby Irene Pratka氏の記事(Canada's libraries step up to help vulnerable people during pandemic)の要約です。