注目の取り組み事例

ホーム > 注目の取り組み事例 > フィンランドのベーシックインカム実験:雇用への効果は小さいものの、経済的安心感と心理的な幸福度は向上

Case.49

フィンランドのベーシックインカム実験:雇用への効果は小さいものの、経済的安心感と心理的な幸福度は向上

(Kelaより)

フィンランドでは2017年から2018年にかけてベーシックインカムの実験が行われました。この実験を評価する研究結果が、2020年5月6日に公開されています。主な結果は以下の通りです。

  • ベーシックインカムの受給者は、生活満足度が高く、精神的ストレスを感じていなかった
  • 受給者は、経済面での幸福度(ウェルビーイング)が高い
  • その一方で、雇用に関する効果は、あまり大きくない


実験の全体像

この実験では、2,000人の失業者が月560ユーロの非課税のベーシックインカムを受け取りました。ベーシックインカム受給者は、2016年11月にKela(フィンランドの社会保険機関)から失業手当を受け取っている人の中から、無作為に選ばれました。またコントロール群も失業手当受給者から選ばれました。実験が行われたのは、2017年の1月から2018年12月31日にかけてです。


雇用に対する効果

雇用効果は事前の計画に基づき、2017年11月から2018年10月の1年間にわたり測定されました。この期間、コントロール群の雇用日数が平均73日なのに対し、受給者は78日と、ベーシックインカム受給者の雇用日数がわずかに多い結果でした。ただし、フィンランドでは2018年から新たな失業手当の受給基準が導入されていることから、実験の解釈は慎重に行う必要があります。


幸福に対する効果

幸福に関する効果については、実験終了直前に、電話インタビューにより調査が行われました。ベーシックインカム受給者は、コントロール群に比べて、自分たちの幸福について肯定的に回答していました。自分たちの生活により満足し、心理的なストレスや、鬱、悲しみ、孤独を感じない傾向や、記憶や学習、集中力といった認知能力を肯定的に捉える傾向もありました。

また、ベーシックインカム受給者は、収入など経済面の幸福度について、肯定的に回答する傾向がありました。受給者は「自分たちの経済状況を管理することができ、経済的に守られている」と感じています。さらに、他者や社会制度を全体的に信頼する傾向や、自分の将来や物事に影響を与える力について自信を持っています。

なお、ベーシックインカムによって幸福度が高まるという結果は、他国のベーシックインカムの実験でも報告されています。


(新津 尚子)

 

Page Top