漏れバケツ理論
「漏れバケツ理論」は、英国のロンドンに本部があるNew Economics Foundation(NEF)が打ち出した概念で、地域を「バケツ」にたとえて地域内経済循環の効果を説明するユニークな考え方です。
多くの地域は、地域というバケツにできるだけたくさん水を注ぎ込もうと(つまり、地域にお金を引っぱってこようと)、政府からの補助金獲得や、企業誘致、観光客の呼び込みなどを行っています。
しかし、多くの場合、せっかく地域に注ぎ込まれたお金の多くは、すぐに地域外に漏れ出てしまいます。
例えば、補助金で行った建設工事を地域外の業者に頼んだ場合、その工事費用の大部分は地域外に出て行ってしまいます。また観光客がお土産を買っても、その土産物が地域外でつくられる場合、お金はやはり地域外に出て行きます。
これが「漏れバケツ」の状態です。水を入れても入れても、水は流れ出てしまい、バケツに水はたまりません。
それでは、お土産を地域産の原料を使って、地域内の工場で生産した場合はどうでしょうか? お土産を生産するために地域外に支払うお金はずっと少なくて済みます。
つまり、バケツに水を溜めるためには、「水を注ぎ入れるペースをアップする」だけではなく、「バケツの穴をふさいで、水が流れ出るペースを遅くする」ことが必要なのです。
このように漏れバケツ理論は、地域内経済循環の仕組みについて、直感的にわかりやすく示してくれる概念です。
参考文献
枝廣淳子, 2017『地元経済を創りなおす』(岩波書店)