地域の「資源循環サイクル」づくりを目指す「菜の花プロジェクト」
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今、全国で「菜の花プロジェクト」の取り組みが広がっています。「菜の花プロジェクトネットワーク」には現在、北は北海道、南は沖縄までおよそ120もの団体が参加しています。
この「菜の花プロジェクト」とは、地域の「資源循環サイクル」の確立を目指して行われている取り組みです。そのしくみは、転作田や休耕田を活用して菜の花を栽培し、収穫したナタネは搾油してナタネ油にして家庭での料理や学校給食に使用。搾油時に出る油かすは飼料や肥料として活用され、家庭や学校からの廃食油は地域で回収されてせっけんやBDF(バイオディーゼル燃料)にリサイクルされ、再び地域で利活用されるという形です。このモデルを1998年に最初に始めたのが滋賀県愛東町(現在の東近江市)でした。
もともとは1970年代に琵琶湖の水質悪化が深刻になる中、滋賀で「せっけん」を使おうという運動が始まったのがきっかけです。この時、「家庭から出る廃食油を回収してせっけんへリサイクルする運動」が広まりましたが、廃食油の回収量が増大する一方で、合成洗剤の普及に伴いせっけんの使用率が著しく減ってしまいした。そんな中、廃食油の新しいリサイクルのしくみを探る中で注目されたのが、ドイツで進められていたナタネ油の燃料化計画だったのです。
菜の花プロジェクトでは、ムダになるものをできるだけ減らし、資源として地域の中で連鎖させ活用することで循環型社会の実現を目指しますが、その取り組みの基本は、しっかりした回収の仕組みを地域の中に作り上げること、それを進める人々を育てることです。さらに、それぞれの地域の特性や課題を踏まえた上で、集めた廃食油をリサイクルするための適正技術の開発や、リサイクルされたものを地域で利活用していくといった「地産地消」にもつながる考え方を広めることも大切です。せっかくせっけんやBDFにつくりかえても、それが使われなければリサイクルの輪が途切れてしまうからです。
BDFに関しては他にも、品質確保、非課税制度による価格誘導、ディーゼルエンジンメーカーとの協力など数々の問題があるため、菜の花プロジェクトネットワークでは中央政府や地方政府への働きかけも行っているといいます。
最初に始まった愛東町のモデルをもとに、「菜の花プロジェクト」に取り組む地域・団体の数が徐々に増え、それぞれの地域が独自の文化や特性を生かして取り組む中で、養蜂との連携、菜の花の観光利用、小中学校などでの環境教育としての利用などより広い資源循環サイクルへの展開も見られるようになりました。2001年からは毎年「菜の花サミット」が開催され、資源循環型社会、持続可能な社会のより有効なモデルづくりを目指して地域間の相互交流が行われています。
- 菜の花プロジェクトについて詳しくはこちら
http://www.nanohana.gr.jp/