世界の過半数の国が生理物理学的に「成長」 日本は「定常」
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学術誌『Journal of Cleaner Production』2015年12月号に、「世界の過半数の国が生理物理学的に成長経済である」とする論文が発表されました。同論文によると、資源利用が前年度比で相対的に一定(生理物理学的に定常)だった国は、日本、デンマーク、フランス、ポーランド、ルーマニア、米国と少数で、生理物理学的に脱成長を経験している国は、ドイツ、ガイアナ、モルドバ、ジンバブエの4カ国のみでした。
この論文は、リーズ大学サステナビリティ研究所(Sustainability Research Institute)と定常型経済推進センター(Center for the Advancement of the Steady State Economy)に所属するダニエル・W・オニール博士によるもので、今日の経済がいかに「定常経済」の概念に近いかを初めて実証的に分析したものです。
同博士は、ハーマン・デイリー氏が提唱する定常経済の定義や脱成長運動の社会的目標を参考に「脱成長勘定(Degrowth Accounts)」を測る16の指標(人口、家畜、エネルギー利用等の生理物理学的勘定(Biophysical Accounts)を測る7指標と、人間の幸福、平等、民主主義等の社会的勘定(Social Accounts)を測る9指標)を特定し、それらの指標に対応する10年分(1997年から2007年)のデータを用い、180以上の国について分析しました。
日本は世界で唯一、7つの生物物理学的指標全てで定常性〔前年度比増減が±1%内)を達成した国でしたが、資源利用の規模(環境収容能力に対する規模。本論文では「公正割当面積に対する一人当たりのエコロジカル・フットプリントの割合(Ratio of per capita ecological footprint to fair earthshare)」〕が大きく、維持可能なレベルではなかったため、「生物物理学的には定常経済」ではあるが「真の定常経済」ではないとされました。一方、コロンビア、キューバ、キルギスタン、ルーマニア、南アフリカが「真の定常経済」に比較的近い国とされました。
- 論文(The proximity of nations to a socially sustainable steady-state economy)はこちら(英語)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652615010471/pdfft?md5=d49aa23769768720bddd19844043ecef&pid=1-s2.0-S0959652615010471-main.pdf