収入の大きさによって、人々が感じるポジティブな感情の種類は異なる
Wealth, Poverty and Happiness: Social Class Is Differentially Associated With Positive Emotions
http://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Femo0000387
収入が多ければ、人々は幸福になれるのでしょうか?
2017年12月18日にEmotion誌(オンライン版)に掲載された研究ノート「Wealth, Poverty and Happiness: Social Class Is Differentially Associated With Positive Emotions(仮題:富・貧困・幸福:社会階層はポジティブな感情と関連している)」では、米国の約1,500人を対象にした調査結果をもとに、世帯収入と幸福の核となる7つのポジティブな感情(楽しさ、畏敬の念、同情、充足、熱意、愛、自尊心)との関係について明らかにしています。
研究によると、世帯収入が多い人たちは、「充足」や「自尊心」といった自己優先的な感情を感じると回答する傾向が見られました。それに対して、世帯収入が低い人たちは、「同情」、「畏敬の念」、「愛」という、より他人志向的な感情を感じると回答していることがわかりました。
研究ノートではその理由について次のような考察を行っています。人々が置かれている社会的な背景の違いは、社会的な不安や優先事項の違いにつながる可能性があります。そのため社会階層(今回の研究の場合は、世帯収入の違い)によって、感情についての回答パターンが異なることが考えられます。自己優先的な感情は、高い階層の人々が持つ自立心や自己充足といった欲望から生じ、強められるでしょう。それに対して、低い階層の人々は、生活環境が脅かされる傾向があります。彼らの他人志向的な感情は、こうした環境に対処するための相互依存的な絆によって形成される可能性があります。
(新津 尚子)
この論文の本文はこちら(英語)
Piff, P. K., & Moskowitz, J. P. (2017, December 18). Wealth, Poverty,
and Happiness: Social Class Is Differentially Associated With Positive
Emotions. Emotion. Advance online publication
http://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Femo0000387