社会経済的状態による成績の差は10歳のころから始まる
Equity in Education Breaking Down Barriers to Social Mobility
http://www.oecd.org/education/equity-in-education-9789264073234-en.htm
(経済開発協力機構より)
経済開発協力機構(OECD)は2018年10月23日、報告書『教育における公平性:社会的流動性に対する障壁を打破する(Equity in Education: Breaking down barriers to social mobility)』を発表しました。教育における公平性とは、「学校や教育システムがすべての生徒に平等な学習の機会を提供し、生徒の成績の差は、経歴や自分自身でコントロールできない経済的、社会的な環境とは無関係」であることを指します。
報告書によると、2015年のOECD生徒学習到達度調査(PISA)に参加したすべての国と経済において、社会経済的状況が、理科、読み、数学における生徒の学業成績に大きな影響を与えることがわかりました。例えば、不利な条件の生徒の理科の平均点は、有利な条件の生徒より88ポイントも低く、この差は、およそ丸3年間分の学校教育に相当します。
比較可能なデータのあるOECD12カ国の平均をみると、10歳の段階(国際数学・理科教育調査:TIMSS)で、社会経済的条件の有利・不利は数学の点数にかなり影響しています(差を標準化した値は0.41)。しかもその差は15歳(PISA)では0.58、25歳から29歳(国際成人力調査:PIAAC)では0.64と広がっていきます。つまり、25歳から29歳までに見られる到達度の差の3分の2 は、すでに10歳の段階で見られるのです。
また、5カ国の個々の生徒の時系列データによると、PISAにおける生徒の成績は、大学進学や就職など成人早期における成果に強い相関関係がありました。これによって、義務教育中に、社会経済的状態に関する差を減らすことが、教育の流動性を向上させることがわかります。
報告書は、国が、恵まれない子供たちを支援する政策(特に幼児教育など)を作り、強化することが、より平等な学習環境を生み出すことにつながるとしています。