自転車による炭素削減の可能性どのくらい? 世界の自転車利用状況についての研究結果、発表される
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世界の自転車利用状況と炭素削減効果や健康効果をまとめた論文が、2022年8月にネイチャー誌系列のCommunications Earth & Environmentに掲載されました。
持続可能な交通の実現には、乗用車から自転車への移行も必要である一方、自転車についての世界的な生産や利用のパターンは解明されてきませんでした。この論文では、動的マテリアルフロー分析と様々な情報源から収集したデータに基づき分析を行っています。
研究によると、自転車を利用する人の割合がもっとも高いのはオランダです。世界中の人がオランダと同様に1日2.6km自転車で移動した場合、年間6億8600万トンの炭素排出を削減できます。この量は、2015年のドイツ国内の炭素排出量の約86%、2015年の世界の乗用車の炭素排出量の約20%に相当します。
また、自転車利用者が多い国では肥満が少ない傾向がありました。世界保健機関(WHO)が開発した健康経済評価ツールに基づくと、オランダのサイクリング・パターンを世界中で踏襲した場合には、年間62万人の死亡を防ぐことができます。
どうすればこうしたパターンを世界中で実現できるでしょうか。オランダのアムステルダムのような自転車先進都市から、適切な自転車レーンの計画と建設、自転車教育と文化、税金により自動車使用を抑制する政策などを学ぶことが不可欠です。
なお、2015年の一人あたりの自転車販売台数の上位は、欧州(主に北欧)、日本、米国であるなど、日本は自転車保有率が高い国の一つでした。
(新津 尚子)
- この記事の原文はこちら(英語)
https://www.nature.com/articles/s43247-022-00497-4