「現代奴隷」の状況にあるのは世界で5,000万人 新型コロナウイルスの流行などによりリスク高まる
現代奴隷制の世界推計
https://www.ilo.org/global/topics/forced-labour/publications/WCMS_854733/lang--en/index.htm
2022年9月12日、国際労働機関(ILO)、国際人権団体ウォーク・フリー、国際移住機関(IOM)は報告書、『現代奴隷制の世界推計』を公表しました。同報告書が発行されるのは2017年以来5年ぶりです。
報告書によると、どの1日をみても、5,000万人もの人が自分の意思に反して働くことを強制されたり、結婚を強制させられたりしている「現代奴隷」の状況にあります。この数字は、世界の人口のおよそ150人に1人に相当します。
現代奴隷の問題は、貧しい国だけで生じているわけではありません。強制労働の半数以上は高中所得国または高所得国で発生しています。また、強制労働の地域ごとの人口比率をみると、アラブ諸国が人口千人あたり5.3人と最も多く、次いでヨーロッパ・中央アジアが4.4人、南北アメリカとアジア太平洋地域はともに3.5人、アフリカは2.9人と、世界中で強制労働が生じていました。強制結婚も26%が高所得国と中高所得者国で生じています。
現代奴隷の被害を受けているのは、貧困層や社会的に排除された人々、インフォーマル経済の労働者、非正規労働者や保護されていない移住労働者、差別を受けている人々など、最も脆弱な立場の人々です。また現在は、新型コロナウイルスの流行や武力紛争、気候変動といった複合的な危機により、現代奴隷のリスクが高まっています。前回(2017年版)の推計と比べて、現代奴隷の状況に置かれている人は1,000万人近く増加しています。
(新津 尚子)