「GDPに関する国民の意識調査」結果を発表
有限会社イーズ
日本国民は「経済成長のジレンマ」をどのように感じているのか?
~「GDPに関する国民の意識調査」結果を発表~
有限会社イーズ(本社:東京都世田谷区、代表取締役:枝廣淳子)が本年1月に設立した「幸せ経済社会研究所」(所長:枝廣淳子)は、本日「GDPに関する国民の意識調査」結果を発表しました。この調査は、「日本のGDP、中国に抜かれて世界第3位に転落」というニュースを受け、国民がこのニュースをどのようにとらえているか、加えて、日本や世界のGDPの成長について、どのように感じているかを知るためにおこなったものです。
アンケートは、インターネットアンケート調査会社(株式会社マクロミル)に委託し、20歳~70歳の500人(年代、性別および大都市/中小都市・地方の割合は日本人口比に合わせる)を対象におこないました。
「中国のGDPが世界2位に、日本は3位に転落」というニュースに対してどう思ったかを尋ねる質問に対して、半数を超える51.6%が「別にどうということはない」と答え、「ショック/がっかり/くやしい」と答えた41%を上回りました。このニュースに対しての考えや思いを尋ねたところ、「日本もがんばらなくては」「政治がしっかりすべき」「中国を脅威に感じる」などの意見もあったものの、「数年前から予想されていたので特に何も感じない」「もともと人口が違うので当然」「国民一人当たりGDPで見れば日本の方が高いので気にならない」といった答えも多く、全体として比較的冷静にこのニュースを受けとめていることがわかりました。
報道による産業界のこのニュースに対するコメントを見ると「中国のGDPが伸びることは外需中心の日本にとって朗報」といった受け取り方も多く見られました。こういった受け取り方にも、今回の調査で多く見られた「中国のGDPが伸びたとしても一人当たりで見れば日本の方が高いので気にならない」というコメントにも、「日本や世界のGDPは伸びるべきもの」という暗黙の前提があると言えるでしょう。
そこで、「日本や世界のGDPが伸び続けることは必要だと思っていますか?」と尋ねたところ、「必要だと思う」が44.8%、「必要ではないと思う」が19.4%、「わからない」が35.8%でした(図1参照)。それぞれの理由を尋ねたところ、「必要だと思う」との回答の理由として「経済が成長しないと、雇用も安定せず、私たちの生活に影響をきたす」「今の生活を維持するために必要」「国民の幸せのために必要」などの意見が多く見られました。「必要ではないと思う」の理由としては、「永久に伸び続けることは不可能」「もっと大切なものがあると思う」「GDPが幸せの全てではない」「物質的な豊かさを追い求める時代は終わったと思う」などの意見が多く見られました。「わからない」の理由として、「伸び続けることができるかわからない」「伸びていくことがよいのかわからない」「何がよいのかわからない」「GDPがよくわからない」という意見が多く見られました。
次に、「日本や世界のGDPが伸び続けることは可能だと思っていますか?」と尋ねたところ、「可能だと思う」が30.2%、「不可能だと思う」が25.8%、「わからない」が44.0%と、「わからない」が最も多い答えでした(図2参照)。それぞれの理由を尋ねたところ、「可能だと思う」の理由として、「日本には技術力があるから」「新しい産業や潜在的な成長分野があるから」「中国やインドなどこれから伸びる国があるから」などの意見が多く、「不可能だと思う」の理由としては、「何事にも限界があるから無理」「地球の資源には限りがあるから」という意見が多く見られました。「わからない」の理由としては「GDPそのものがわからない」「想像・予測がつかない」といった意見が多く見られました。
両問をあわせてみると、「GDPが伸び続けることは必要」だと思っている人の中にも「可能ではない、可能かわからない」という人が少なからずいることがわかります。具体的には「必要」と答えた224人中、「可能」だと思っている人が53.1%に対して、「不可能」だと思っている人が11.2%「わからない」人が35.7%と、半数近くの人が「不可能、またはわからない」という答えでした。
ちなみに、男女別・年代別に見ると(図3~5参照)、女性では「必要か」「可能か」の両問とも「わからない」との答えが圧倒的に多いことが特徴で、「不可能」と「可能」の答えは同数となっており、30代、50代は「GDPが伸び続けることは不可能」と考えている人が「可能」と考えている人よりも多くなっています。
「現在の経済・社会システムの中では経済成長を続けないと雇用や生活が不安定になってしまう」一方、「地球の資源やエネルギー、CO2吸収源などの限界を考えれば、永遠に経済成長を続けることは不可能である」という状況は、「経済成長のジレンマ」と呼ばれ、近年サルコジ仏大統領の諮問によりGDPが経済指標として適切であるかを問い直す委員会の報告が出され、英国政府の持続可能な社会委員会からも「成長なき繁栄」レポートなどが出されるなど、政治的にも大きく取り上げられるようになってきました。今回のアンケート調査から、日本の国民の間にも「GDPの成長は必要だ」という思いは強いものの、地球の限界等を鑑みて「それは不可能ではないか、可能かどうかわからない」と「経済成長のジレンマ」を感じている人が少なからずいることがわかりました。同時に「GDPが何を測っているのかわからない」「GDPは幸せを測っていない」と感じている人も少なからずいることが明らかになりました。
「社会や経済を不安定にすることなく、どう地球の限界と折り合いをつけ、真に幸せな社会を築いていくか」「社会の真の進歩や幸せを何によって測るのか」は、今後の政府、自治体、企業をはじめとするあらゆる組織、そして私たち一人ひとりにとって避けることのできない課題です。このたび設立した「幸せ経済社会研究所」はこのチャレンジに正面から向き合い、調査研究/情報発信/世論形成/対話/世界の動きとのネットワークづくりといった活動を展開していく所存です。
※図1~5はDownload fileこちらからご覧ください。
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