【調査結果報告】コロナの状況下からコロナの先へ 「当たり前」を問い直す2つのアンケート
2020年6月30日(火)に開催した「コロナの状況下からコロナの先へ 2つのアンケート調査結果オンライン報告会」より、2つのアンケート調査結果について概要をご紹介します。
※調査結果資料(全体)はこちらよりダウンロードください
1.調査概要
調査はほぼ同じ内容の2つの調査を同時並行的にインターネットで行いました。一つは調査会社に委託して、全国の約500人を対象に、年代、性別、住んでいる場所を日本人口比に合わせて行ったものです。こちら、一般からとっているという意味で、スライドでは「一般」という名前をつけています。
もう一つが枝廣の環境メールニュースやフェイスブックなどで呼びかけて実施したもので、こちらは環境問題などへの関心が高い層が多いという点から「高関心層」と名前をつけています。
今回は「一般」と「高関心層」でどれくらい結果が違うのか、というところに焦点を絞って、結果をご報告します。
2.質問項目
ご覧のような質問項目を設定しました。
3.調査結果
1問目は「ご家庭の食料の入手方法がコロナの状況下で変わったかどうか」というものです。
「一般」ですと、「変わった」という方が7%、「やや変わった」が27%、あわせて35%程度でした。
それに対して「高関心層」は15%が「変わった」、35%が「やや変わった」ということで、半数程度が「変わった」と回答しています。この数字だけ見ると「一般」と「高関心層」はかなり傾向が違うということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
また、違いが大きくわかるのは自由回答の結果です。記述からよく出たワードをピックアップしました。
特徴的な語を拾っていくと、「高関心層」は「地元」「近所」「産地」「支援」という言葉がかなり出てきていることがわかります。そうした言葉が「一般」ではどうなのかというと、「近所」というのが47位に入っていたのですが、ほかの言葉はよく出てくるワードとしてはありませんでした。「高関心層」だと支援型購入に関連するような回答が散見されました。
4.共起ネットワーク分析を加えて
こうした特徴をもう少し全体的にわかる方法として「共起ネットワーク分析」という分析方法を自由回答結果にかけてみました。この分析方法は、一緒に使われていることが多い語のパターンを抽出する方法です。
言葉と言葉が線で結ばれていますが、それは関係の程度が強いほど濃くなり、円の大きさはたくさん出ていた言葉が大きく出ます。
※なお、図の中の「買い物の回数を減らす」といったラベルは、共起ネットワーク分析の結果と自由回答結果を照合してつけたものです。
4-1:「食料の入手方法の変化」
<一般>
「近所で買う」「短時間で買う」「ネットスーパー」「生協」「まとめ買い」「冷凍食品」などが挙がりました。
<高関心層>
特徴的なところで、「生産者応援」「コロナ支援」「産地から取り寄せ」「地元の野菜を購入」というように、支援型の食料入手方法への変化というのが分析結果からも出ました。
4-2:「自由に使える時間」
<一般>
「趣味の時間」「断捨離」「自宅で運動や料理」「お菓子作り」「在宅勤務」「家族と過ごす」などがでました。
<高関心層>
「丁寧に何かをする」「生活の見直し」「ボランティア活動」や「オンラインセミナー」という言葉が見られます。
4-3:「新たに始めたこと」や「以前より時間を使うようになったこと」
<一般>
「消毒」「手洗い」「マスク」といったような衛生系がかなり出ました。
<高関心層>
「マスク」というのはありますが、ここでピックアップした中には「消毒」と「手洗い」は入ってきませんでした。それは共起ネットワーク分析にも真ん中にかなり大きく表れています。「コミュニケーションを丁寧にとる」「地域との対話」といったコミュニケーション系、ボランティアやオンラインセミナーへの参加、講座やイベントといった将来のために時間を使っているといった結果でした。
4-4:「新たに始めたことのうちに、コロナ後も続けたいこと」
<一般>
「手洗いや消毒」というのがかなり頻度としては大きく出ており、「元の生活に戻る」という言葉もありました。
<高関心層>
「自己啓発」「社会問題」「オンラインセミナー」「ボランティア活動」、「上記すべて」というパターンが見られます。これを見ても、高関心層はコロナの状況下で始めたことをこれからもずっと続けていこうという傾向があることがわかります。
4-5:「人との関係性についての変化」
<一般>
「ネガティブな回答」が比較的多くパターンとしてあり、「知り合いに会えない」「ストレスがある」「機会が減少」という言葉が多く出ました。
<高関心層>
ネガティブな言葉もありますが、たとえば「物理的に遠い人とつながれるようになった」という回答や、「気軽に会えなくなった」というものと「気軽にオンラインで会えるようになった」というものが同じ塊で認知されていました。このように高関心層はネガティブなものもありながら、ポジティブに捉えているというのがうかがえる結果です。
4-6:「幸福度の変化」
「一般」では14%が上がったと回答しているのに対して、「高関心層」は44%が上がったと回答し、約30ポイントの差がありました。
<一般>
「時間が増えた」といったもののほかに、「経済的に安定」「金銭面で困っていないから幸せ」という回答がパターンとしてありました
<高関心層>
「大切さを感じる」「当たり前に感謝する」といった感謝系のもの、「新しい活動を始めた」というパターンもありました。
5:まとめ
「一般」と「高関心層」は「自由回答」の内容の質が大きく異なるということが、今回の結果からわかりました。言い換えると、コロナの状況に対する適応の仕方の違いといえるでしょう。「高関心層」はコロナの状況下で起こる事象をそれぞれのチャンスとして前向きに捉えているということがうかがえる結果だったと思います。