5歳未満死亡率の地域差、2000年代に入り広がる
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(国立研究開発法人国立成育医療センターより)
国立研究開発法人国立成育医療センターは、2017年6月、「子どもの健康の地域格差が広がっている可能性がある」との研究結果を発表しました。この研究は、過去115年分の人口動態統計のデータをもとに行われたものです。
分析の結果、5歳未満の乳幼児の死亡率は、1899年の出生1,000人あたり238人から、2014年の3人まで一貫して低下しており、ほかの先進国と比べても低い水準にあります。
ところが、5歳未満死亡率の地域格差は、2000年代に入ってから広がりつつあります。この研究では、都道府県による5歳未満死亡率の差を調べるために、タイル尺度(不平等度の測定に使われる指標で、数字が小さいほど格差は小さい)を用いています。
タイル尺度は戦後一時的に上昇し1962年にピーク(0.027)に達しましたが、その後は徐々に改善し、1970年には0.01未満にまで低下しています。ところが、2000年代に入ってからタイル尺度は上昇をはじめ、2014年には0.013と1970年の値を超えました。これは第二次大戦以前の値に近い水準です。
5歳未満の死亡率は、子どもの健康の評価基準のひとつであり、今回明らかになった変化が、真にこどもの健康における格差の拡大を示しているのか、その場合はその要因は何かといったことについて、より詳細な検討が求められると、同センターは述べています。
乳幼児の死亡率が下がり続けていることはよいニュースですが、子どもの健康の地域による格差が広がっているとすればそれは大きな問題です。5歳未満死亡率以外の指標でも同じ傾向が見られるのかなど、子どもの健康格差の動向に注目する必要があります。
(新津 尚子)
- この研究についてのプレスリリースはこちら
http://www.ncchd.go.jp/press/2017/INEQUALITY_170524.html