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2011.03.25
メディア掲載

雑誌「日経サイエンス」(2011年5月号)に「幸せ経済社会研究所」が紹介されました

「日経サイエンス」(2011年5月号)の日本経済新聞論説委員の滝順一氏が執筆されている「当世かがく考 砂漠の駝鳥」のコーナーに、「ダウンシフトで幸せになれるか」と題し、幸せ経済社会研究所が紹介されています。了承を得て、ご紹介します。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~

日経サイエンス2011年5月号(2011年3月25日発売)
砂漠の駝鳥 「ダウンシフトで幸せになれるか」
滝順一

 環境ジャーナリストや翻訳家として多彩な活動をしている枝広淳子氏が「幸せ経済社会研究所」という組織をたちあげた。幸福と経済成長と社会の関係を改めて問い直すことを目的に掲げている。
http://ishes.org/

 地球温暖化や生物多様性喪失など環境の危機が進行する一方で、自殺が増え虐待や孤独死が日本社会で常態化する。こうした環境と社会の問題の解決には、長年の間に染み付いてきた「経済成長ありき」の思考を変えていく必要があるのではないか。そう問いかける。

 人間が地球環境に与える負荷の大きさは地球全体の環境容量を超え、すでに1.4個分を必要するとされる。人間活動の拡大はすでに持続可能ではない。また1人当たりの所得が増すことが個人の幸福観の増大につながっていないとする調査もある。

 国内総生産(GDP)の伸び方で成長を測るやり方への見直し論は国際的にも多い。ブータンが提唱した「国民総幸福量」はよく知られる。サルコジ仏大統領は2年前、GDPに医療福祉の充実などいくつかの要素を加えた新しい尺度をつくると宣言した。世界銀行などでも新指標の研究が進んでいるという。

 国内をながめると、若い世代がモノを買い所有する意欲をかつてほど強く持たなくなったと指摘される。都会を離れて農業を手掛ける人も増えた。「下流志向」というと、働く意欲がなくずるずると生活水準を下げていくイメージがあるが、それとは違って意識的に消費生活をダウンシフトしていく動きがある。ぜいたくはできなくても、自然志向で心の落ち着く生活を望む気持ちは多くの人が共有するところだろう。

 しかし、目を転じると、異なる風景が見える。年金や医療・介護など日本の社会保障はこのままでは持続可能でない。人口が減っていくなか、生産性を高めてより高い成長を実現しなくては、社会保障の仕組みを維持できない恐れがある。教育や文化、環境保護に投じるお金は、日本は先進国の中でお世辞にも多いとは言えない。もっとお金が要る。

 高度成長期につくった道路や橋、ダムなど社会基盤の老朽化が進み、これから盛んに補修していかないと、国民の生命の安全や生活の利便を損なう心配がある。また、お隣で軍事力を拡大する国があり、領土の確保や漁業者の安全のためには今より安全保障にかける投資を増やさなければならないという指摘もある。

 食糧やエネルギー資源の多くを輸入に依存している国でもある。莫大な輸入代金を支払うには、何かを輸出してお金を得るか、日本人や企業が海外で儲けたお金を国内に還流するしかない。中国やインドなど新興国が急速に競争力を高め成長する世界では、資源と市場の確保の両面で日本の産業とビジネスマンの競争力を今まで以上に磨かねばならない。新興国との新たな競争に直面した米国や欧州諸国も、今は経済成長にアクセルを踏む。

 こんな状況で、ダウンシフトで日本はやっていけるのか。反論はたくさんあるだろう。

 例えば、西水美恵子・元世銀副総裁は新聞のインタビューで「国民の幸福など測ってもムダ」と話している。幸せになることは目的であるが、経済成長はその実現手段として不可欠だと主張する。(2010年6月21日付日本経済新聞朝刊) 

 生活の基盤である経済・社会が不安定で明日をも知れない有様では、多くの人が幸福を実現するのは容易でない。だが、社会や経済の安定のために個人の生き方が犠牲になるばかりでは幸せな社会とも言えないだろう。また、人間社会が地球環境に過大な負荷をかけ続けることはできない。

 このジレンマを解くカギはどこにあるのか。資源配分にあるのだろうか。貴重なお金や時間、天然資源を、幸福度を高める方向に使わずムダに費やしているのかもしれない。成果の分配の問題だろうか。経済成長の成果として得られたものを適切に配分できず、働いても報われない状況を生み出しているのだろうか。

 心の問題だろうか。みなが考え方を変えれば新しい社会・経済システムが生まれるのか。科学技術の問題だろうか。技術革新は物質的な豊かさや欲望の増大を促すばかりで「足るを知る」思想を育まなかったからだろうか。

 答えがないのが現状だ。「答えがない、出そうもないと言って、問題から目をそむけていていいのか」。枝広氏は研究所設立の目的をそう位置づける。その通りだと思う。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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