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Case.16

スローマネー(アップデート)

<スロー・マネー運動とは>
「スロー・マネー」は米国でブームになっている、地元の小規模な食料業者への投資を呼びかける運動で、これまでに3,900万ドル(日本円で46億円相当の金額!*)が米国の367の小規模な食料事業者に投資されています。投資の機会でもあるスロー・マネーのイベントは、米国以外の7カ国でも行われ、「スロー・マネー原則」に署名した人も3万人を超えています(スロー・マネー原則については、最後にご紹介します)。
*換算レートは2015年1月現在のものです。

このスロー・マネー運動は、2011年のアントレプレナー誌(Entrepreneur Magazine)の記事で、クラウド・ファンディングやクレジット・ユニオンと並んで、金融分野で5本の指に入る流行とされるほど、大きな流れになっています(http://www.entrepreneur.com/article/217795)。

この運動のヴィジョンは「それは土と共に始まる」「事情者は種」「投資家は水」というものです。ヴィジョンのそれぞれを簡単に説明すると、次の通りです。

  • それは土と共に始まる:土をむしばむことは、社会関係資本をむしばむことであり、コミュニティをむしばむことです。
  • 事情者は種:小規模な食料事業者は、コミュニティの仲間です。その事業は仕事を作り、文化的、生態的、経済的な多様性を作り、そして地域の食料システムをしっかりとしたものにします。
  • 投資家は水:たくさんの人々が、ほんの少しのお金をスローダウンさせることで、資本を育む産業を作り始めることができます。

<歴史>
「スロー・マネー」運動の始まりは2008年まで遡ることができます。スロー・マネーの創始者で代表でもあるWoody Tasch氏は2008年に『Inquiries into the Nature of Slow Money(仮題:スロー・マネーの本質を追求する)』と題する書籍を出版するとともに同年に運動を開始、2009年には非営利組織を立ち上げ、第1回目の全国大会を開いています。

現在では、スロー・マネーの地域ネットワーク・グループは、全米に21グループあります。米国以外にもフランス、スイス、カナダのノバスコシア州、オーストラリアにまで地域グループは広がっています。

<投資>
投資は、全国大会や各地で開かれるイベントを中心に集められます。全国大会は2009年から実施されており、大会では様々な話者による講演が行われるほか、全米から集まった将来性のある食料事業者が、自分たちの事業についてプレゼンテーションを行い、投資を集めています。

例えば、第2回目の全国大会でプレゼンテーションを行ったバーモント州のグリーン・マウンテン・オーガニック乳製品販売所は、28万ドル(日本円で3千万円以上)の投資を受けています。この地元の乳製品販売所は、Kimball
Brook農場の農家によって始められたものです。

この記事の頭で、スロー・マネー運動で、これまでに3、900万ドルもの金額が投資されていることをご紹介しましたが、全国大会でもこれまでに700万ドル(8億円)以上の金額が35の小規模な食料事業者に投資されています(2014年の全国大会の資料より)。

またオンライン上でも、最低25ドルという小さな金額からの寄付を受け付けるサイト「Gatheroud」が開設されています。このサイトに登録すると、様々な事業の中から自分がお金を寄付する事業を選ぶことができます。このお金は、事業者に3年間無利子で貸し付けられ、その後、回収されたお金は、将来のGatheroundや全国大会にまわされます。
(またスロー・マネーのサイトでは、その他に1000ドル以上など比較的大きな金額を、地元の事業者に投資できる組織も紹介しています。)

<スロー・マネー原則>
最後にスロー・マネー原則をご紹介します。スロー・マネーのウエブサイトでは、この原則への支持を署名で表明することもできます。

スロー・マネー原則

食料安全保障と食べ物の安全性と食料へのアクセスを高め、栄養と健康を改善し、文化的・環境的・経済的な多様性を促進し、"地球から取り出して消費する"ことの上に築かれている経済から、"保全と修復"を基盤とする経済への移行を加速するために、ここに以下の「スロー・マネー原則」を確認する。

  1. 私たちは、お金を"地に足のついたもの"にしなくてはならない。
  2. 速すぎるお金、大きすぎる企業、複雑すぎる金融というものがある。したがって、私たちのお金をスローダウンしなくてはならない――もちろん、すべてのお金ではないが、違いを生み出すのに十分な規模で。
  3. 20世紀は、「安く買って高く売る」「いま儲けて社会貢献はあとで」という時代だった――これをあるベンチャー投資家は「史上最大の合法的な富の蓄積」と呼んだ。21世紀は、地球の扶養力、コモンズ(共有物)への配慮、場所の感覚、非暴力の原則に基づく「育む投資」の時代となる。
  4. 食べ物や農場、土壌の肥沃度が大事なのであれば、投資することを学ばなくてはならない。投資家を、その住んでいる場所につなげ、重要な関係性と、小規模な食料事業者への新しい資本源を創り出さなくてはならない。
  5. 「大儲け」から「暮らし」への道を示している事業者、消費者、投資家たちの新しい時代を祝おうではないか。
  6. ポール・ニューマンは「ふと思ったのだけど、人生や暮らしにおいて、私たちはちょっと農夫みたいになることが必要なんじゃないかな。取り出したものを土の中に戻す農夫のように」。この言葉に込められた知恵を認め、その基礎部分から私たちの経済の再構築を始めよう。次の問いを考えてみよう:
    • もし私たちが自分の資産の50%を、住んでいる場所から50マイル以内に投資をしたとしたら、どんな世界になるだろうか?
    • 新しい世代の企業が、その利益の50%を寄付するようになったら?
    • 今から50年後には地中の有機物が50%増えているとしたら?

*なお、『Compromiso Empresarial』の2013年3/4月号にスペイン語で掲載されたスロー・マネーについての記事の日本語訳はこちらからご覧になれます。
http://ishes.org/cases/2014/cas_id001296.html

 

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