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Case.28

2017年は世界各地でベーシックインカム元年

(ベーシック・インカム・アースネット・ワークより)

2017年に入り、ベーシックインカム(BI)の試験的導入や新たな計画が次々と始まっています。ベーシック・インカム・アースネット・ワーク(BIEN)の記事から、世界各地のBI事情をお届けします。

1.フィンランドの試験的導入
フィンランド政府は、2017年1月から2年間の予定でBIを試験的に運用しています。

  • 給付対象者は25~58歳の失業手当受給者から無作為に選出した2,000人。
  • 給付額は毎月560ユーロで、求職活動の有無に関係なく、期間中に就職しても引き続き給付する。

実証実験では、「実験群」(現金が給付されるグループ)と「統制群」(選出されず、現金が給付されないグループ)とを比較し、就業率など労働市場参加への影響が調査されます。

2.ケニアでの慈善団体によるBI実証実験
ケニアでは、米国の慈善団体GiveDirectlyが、2016年10月から実施している試験的プログラムに続き、2017年秋から本格的な実証実験が開始される予定です。

  • 300の村から200の村を「実験群」に無作為に選出し、残りの100の村を「統制群」とする。
  • さらに実験群を、1)40の村の全住民に毎月約23米ドルを12年間給付する、2)80の村の全住民に毎月約23米ドルを2年間だけ給付する、3)80の村の全住民に月額約23米ドルの2年間分を一括で給付する、という三つのグループに分類する。
  • 合計で約2万6,000人に給付される。

この実証実験では、第1と第2グループを比較することで、将来給付されるという保証が現在、住民にとってどれほど重要かを把握し、第2と第3グループの比較では、月払いを止めるとそれにどう影響するかをみることが狙いです。また、経済状態(生活水準など)、時間の利用(労働や教育など)、リスクテイク(移住、起業)、ジェンダー関係(特に女性の社会的地位の向上)も調査されます。

3.オンタリオ州の最低所得保障の予備調査
カナダでは、オンタリオ州が2017年4月に、3年間の最低所得保障(カナダでの名称は「BI」)の予備調査を開始しました。

  • 給付対象者は18~64歳の低所得者から無作為に選出した4,000人。
  • 給付額は、単身者で年間最高1万6,989カナダドル、夫婦で年間最高2万4,027カナダドルとなっており、ほかに収入がある場合は、その収入の半分を減額する。障害者にはさらに年間最高6,000カナダドルを給付する。

調査の目的は、実験群と統制群とを比較し、食料安全保障や医療受診、居住の安定、教育、労働市場参加など幅広い分野への影響を測ることとしています。

4.オランダの自治体の社会扶助
国の社会扶助における勤労福祉制度の代替策として、無条件の現金給付制度の導入を模索しているのがオランダの自治体です。フローニンゲン市など六つの自治体において、2017年10月から2年間の予定で、試験的に導入することになっています。

  • 給付対象者は現在、社会扶助を受けている人から無作為に選出され、1)福祉支給金の受給に必要な「仕事に応募するなどの社会復帰のために活動している」という条件を無くす、2)社会に復帰するためのサービスをより強化する、3)給付金に加え、収入を得ることを許可される、という三つのグループに分類される。
  • 3)のグループは収入の半額を受け取ることができるが、その額は毎月最大199ユーロまでに制限されている。
  • 「無条件」で給付される対象となっていても、オランダの法律の下、給付開始から6~12カ月の間に求職活動をしていなければ、対象から外される。

この試験では、実験群と統制群とを比較し、雇用や教育、健康、幸福度への影響を調査する予定です。なお、広く報道されているユトレヒト市での試験的導入はオランダ政府の認可が下りなかったため延期されており、この六つの自治体には含まれていません。

5.ウガンダでの慈善団体による無条件の現金給付 
ベルギーの慈善団体「エイト」は2017年1月、ウガンダのブシビ村で、2年間にわたり無条件でお金を給付する活動を開始しました。

  • 給付対象者は村の全住民(成人56人と子ども88人)。成人には毎月18.25米ドル(ウガンダの低所得世帯の平均所得のおよそ30%に相当)、子どもには毎月半額(9.13米ドル)を給付する。お金は携帯電話を通じて渡される。

エイトはベルギーのゲント大学の人類学者たちと協力し、女子の教育の達成度、医療の利用、起業家精神と経済発展、民主主義的な制度への参加にどのような影響があるかを調査します。

6.米国シリコンバレーのBI調査
シリコンバレーを拠点とするYコンビネーターの社長、サム・アルトマンは2016年1月、社内に調査チームを設立し、カリフォルニア州オークランド市で先行実験を開始しています。現在は3~5年間の本格的な実証実験に向けて下記のような計画を練っています。

  • 二つの州から平均所得以下の成人の若者3,000人のサンプルを収集。そのうち1,000人を無作為に選び、毎月1,000米ドルを無条件で給付し、残りの2,000人には統制群として、毎月50米ドルを給付する。

この試験は、雇用への影響だけでなく、時間の利用、メンタルと身体の健康状態、主観的幸福度など、また、家族や友人、コミュニティへの波及効果など幅広い調査を目的としています。

7.スコットランドのグラスゴー市での取り組み
スコットランドのグラスゴー市では2017年2月に、BIの実証実験の実施が議会により可決されました。英国のBIに詳しいシンクタンク「英国王立芸術・製造・商業振興協会(RSA)」と共同でBIの試験的導入に向けて準備中です。

にわかに注目されているBIですが、計画が立ち消えるケースも
昨今、BIについて頻繁に報道されていますが、その中には計画が立ち消えになるものも出てきました。カリフォルニア州サンフランシスコ市などでは、主に資金の確保ができないという理由で予備調査が実施されていません。

また、多くのメディアで「BI実証実験」と呼んでいる取り組みには、「本物」のBIからかけ離れたものがあります(例えば、貧困地域にお金を給付するバルセロナの実証実験など)。BIENの定義では、「BIとは、すべての個人に、収入や就労の調査をせず、無条件で定期的に給付すること」としています。


一口にBIと言っても、現状をみると場所や目的、規模で大きく異なっています。地域独自の問題や状況を見極めて成果を測るためには、今後もさまざまな実証実験が必要となりそうです。

(佐々 とも)

 

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