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アースポリシー研究所所長 レスター・ブラウン 聞き手 枝廣淳子  Interview02

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モノの時代からシェアやサービスの時代へ

枝廣:
日本には、生産と販売のモデルから、サービスを中心としたモデルに着目するようになった企業があります。自動車を製造して、消費者に販売するのではなく、例えば、カーシェアリングやレンタカーなどのサービスに注目しているのです。これは、ある程度、環境負荷の低減につながるでしょう。さらに、販売台数を増やすのではなく、人々に恩恵やサービスを与えることによって、利益を増加させることができます。他のところでもこうした変化が見られますか?
レスター:
ええ。最初、私たちはレンタカーに目を向けました。自動車が必要なときに借りるだけです。それが一つのステップでしたが、次に最も先端的なカーシェアリングを始めました。現在では、米国と欧州の大部分の都市で、カーシェアリングが実施されています。
カーシェアリングによって、道路を走る自動車の数の必要性が減ります。例えば、人口当たりの自動車総数が減り始めるので、必要な駐車場の収容可能台数も減ります。人々は必要なときだけ自動車を使うからです。多くの人々は、自動車を、週末の時々の外出などだけに使います。自動車に投資する意味はありません。ですから、支出が、モノから、教育や医療などのサービスへシフトしてきています。教育も医療も、製造部門ではなく、サービス部門になります。
枝廣:
ええ、その通りです。
レスター:
ですから、よりサービスを主体とした経済が誕生するでしょう。教育については、どれほどの成長が望ましいか誰もわかりません。しかし、世界の大部分は、教育という部門へのより多くの投資や成長から恩恵を受けることは確実です。
枝廣:
とても興味深いですね。教育や医療などのサービス部門へのシフトによって、環境への負荷が低減されると同時に、雇用も増加させることができます。
U Car Shareの専用駐車場の看板。

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食も農もエネルギーもローカルに

枝廣:
多くの企業はたくさんの大きな問題に直面していると思います。一つは消費者の消費の減少であり、もう一つは、炭素税や原料価格の高騰などの環境問題に起因するコスト的な要因です。多くの企業が解決策を模索しています。その一つが、サービス業界への移行ですが、もうひとつの可能性が、地域のビジネスに注目することです。全国規模で巨大な産業の製造拠点を持つのではなく、小規模で地域密着型のビジネスに注目しています。それはビジネスモデルとして成り立つでしょうか?
レスター:
例えば、米国の農業部門には多くの例があります。米国では、評判のいいレストランはどこでもメニューで地元の食材の使用を強調しています。なぜなら、食材が長距離を移動するにつれて、劣化により栄養価が下がるからです。地元の食材はより体によいものです。
さらに、新鮮な果物や野菜や畜産品は、地球の裏側から運ばれたものよりおいしいですね。このシフトが起きていて、それはファーマーズ・マーケットにも表れています。米国では、ファーマーズ・マーケットの数が、過去10年間でおそらく2倍になり、今後もさらに倍増すると予測されています。現在では、全米各地で地元農家の市場を作り出すために、米国農務省によるファーマーズ・マーケット立ち上げへの支援も行われるようになりました。米国では、多くの小規模農園が作られているため、農園の数が増加している場合があるという興味深い現象が起きています。さらに、興味深いことに、その多くは女性が運営する農園なのです。
 
枝廣:
そうなのですか?
レスター:
はい。従来の農業についての考え方とは逆ですよね。
枝廣:
ええ。
レスター:
しかし、その理由は、地元の市場や地元のレストラン向けに生産していることにあります。スーパーマーケットのチェーンの中には、季節ごとに地元で食材を調達し始めているところさえあります。つまり、農業が再構築されているのです。それは、エネルギー経済の再構築を反映しています。古い食料経済や農業経済は、新鮮な野菜や生花を世界各地へジェット機燃料を使って輸送するなど、大量の石油を消費することで成り立っていました。それが変わりつつあります。第一に、あまりにもコスト高になっています。第二に将来的には、ジェット機燃料用に使うための石油があまりないだろうということです。
ですから、エネルギー経済の地域化による農業の地域化が起きているのです。エネルギーの地域化は、農業の地域化にもつながります。

3.11以降見えてきたことと、世界の動き

枝廣:
それはとても重要な方向だと思います。日本では特に3月11日の大地震と原発事故以来、多くの人々が日本のエネルギー事情について考え直しています。現在のところ、エネルギー政策は政府と産業界のみによって作られています。一般市民の考え方や意見は反映されません。
政府や産業界は、原子力発電を擁する巨大で中央集約型のエネルギーシステムを考えていますが、多くの人々はそんな現状について考え直しを始めています。各地域でのエネルギー資源を活用できる、太陽光発電、風力発電など、より地域化されたエネルギーシステムを持たなければならないのではないかという声も多くあります。
しかし、日本の現在のシステムでは、地域分散型の発電システムを促進することはなかなか困難な作業です。世界のエネルギー事情の全体像を見ると、中央集約型の巨大な発電システムから、地域分散型のシステムへ移行していると思いますか?
レスター:
さまざまなことが起きています。化石燃料から、風力や太陽光や地熱といった、再生可能エネルギー源への電力へ移行しています。さらに、こうした再生可能エネルギー源は、ほぼ必ずといっていいほど、本質的に地域的なものです。石油や石炭を地球の裏側へ運ぶことはできます。しかし、風力や太陽光エネルギーを、地球をぐるりと運ぶことは困難です。
枝廣:
その通りですね。
レスター:
それがいま起きていることの一つです。もう一つは、私たちはまだその初期段階にしかいないのですが、輸送システムの電化が進められています。プラグインハイブリッド車と全電気自動車の開発でもそれがわかります。これら二つはいずれも、私たちを、液体燃料、石油、つまりガソリンから、風力や地熱や太陽光などのエネルギーへ移行するように促しているのです。
例えば、米国では、ほぼ電気のみで自動車を動かす日が近づいてきました。1ガロン当たり1ドル(1リットル当たり26セント)以下のコストに相当します。経済的に考えてみれば、突如として非常に魅力的になります。
枝廣:
そうですね。
レスター:
また、例えば、風力の禁輸措置を行える人は誰もいません。だから、胸が踊るような可能性があるのです。莫大な潜在性が秘められています。米国だけでなく、日本や世界全体にとってもです。米中の科学者チームが中国の風力資源の国全体のインベントリーについて調査を実施しました。『サイエンス』誌で発表された報告によると、結論として、中国は風力のみで現在の電力消費量を16倍まで増やすことができるということでした。この例からも、規模の壮大さがおわかりいただけると思います。
太陽光発電パネル(スペイン)

太陽光発電パネル(スペイン)

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