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NGOコペルニクの共同創設者 兼 CEO中村俊裕 聞き手 枝廣淳子 Interview09

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途上国とテクノロジーをつなぐという、世界的に注目を集める活動を展開しているNGOコペルニクの共同創設者 兼 CEO中村俊裕さんにインタビューをさせてもらいました。テクノロジーをつなぐことで暮らしをよくしようという活動、ぜひご覧下さい。

途上国向けのテクノロジーが、
途上国の人々自らが起業するために活かされたら

枝廣:
コペルニクの立ち上げに至ったきっかけと、何をめざしてどんなことをされているのかを教えてください。
中村:
もともとは、国連で主に途上国の支援をするという活動をしていました。国連は、政府が政府を支援するという枠組みなんですね。国連の職員として、主に東ティモールやインドネシア、シエラレオネの政府を支援するということをやっていたのですが、政府経由だけでは、普通の人々の生活が変わるのはなかなか難しいと思いました。
また、国連は、「お金を出している政府」「支援を受けている政府」「国連」という三角形でだいたいの物事が動いている、閉ざされた世界でもあって、新しく効果的なアイデアを有機的に取り入れてゆくことがなかなかできないとも感じました。
特に、途上国向けのテクノロジーがすごくいっぱい出てくるようになり、いろいろな人が「私はこういうものを作りたい」と起業するようになってきた。これを有効活用すれば、閉ざされている世界がすごくダイナミックになり、意義があると思ったのです。2009年ぐらいからそうのように思い始め、今の活動に向かいました。

暮らしを良くするテクノロジーを集めて
最も必要なものを現地パートナーに選んでもらい、
それを普及させるための寄付を集める

枝廣:
コペルニクでは、人々の暮らしを変えるためにどのようにして、途上国にテクノロジーを届けているのですか?
中村:
「エネルギー」「保健」「教育」「水」「衛生」の5分野で、良いテクノロジーをいつも探しています。そのリストの中から、現地で活動しているパートナーに、そこで最も必要なものを選んでもらい、そこに、さらに寄付を持ってきます。「テクノロジー」と「現地パートナー」と「寄付」の3者をつなげるのです。ウェブサイト上でもつなげることをやっていますし、実際にモノを持ってコミュニティに出かけていき、デモンストレーションすることもよくやっています。
枝廣:
テクノロジーとして登録されているのはいくつぐらいあるのですか?
中村:
60~70でしょうか。最初は10くらいでしたね。
枝廣:
どうやって集めるのですか? テクノロジーを持っている会社からの売り込み?
中村:
それもあります。いろいろ教えてもらえるときもありますし、チームで週に1回勉強会をやっているんですよ。各チームがいつも新しいモノを探して、我々が使えそうかどうかを調べて、プレゼンするやり方で、どんどん増やしていきました。
枝廣:
どういう基準で選ぶのですか?
中村:
まずは、途上国向けに作られているものかどうか、ですね。
枝廣:
具体的には?
中村:
安くて、壊れにくく、使いやすいものです。要するに、いろいろな機能がついているものではなく、説明なしでも使えちゃうものですね。それが基本的な基準です。壊れたとき、保証期間にちゃんと対応してくれるかも重要です。
枝廣:
60~70のテクノロジーの原産国はどこが多いですか?
中村:
いろいろですが、アメリカが多いかな。ヨーロッパやアジアの企業もあります。私たちが本拠地としているインドネシアもけっこう多い。インドの会社もアフリカの会社もあるし、グローバルですね。
枝廣:
日本の企業はどうですか?
中村:
日本の企業だと、最近、教育系で進研ゼミを入れたベネッセぐらいですかね。
枝廣:
日本は技術の国と言われているのに、途上国向けの技術はそんなに・・・
中村:
そうですね、日本の場合は、やはり先進国向けの技術でしたから。途上国向けになると、かなり要件が変わってきますから、まだ慣れていないのかもしれないですね。
枝廣:
アメリカには、先進国向け技術も、途上国向け技術もあるのですね。
中村:
ええ、そこは分かれていますね。大企業じゃなく、ほとんどがベンチャーなんですよ。アメリカには、2年間アフリカや南米などに行っていろいろな技術を指導するピースコープ(平和部隊)という政府の海外ボランティアプログラムがあるのですが、それに参加した人が、ビジネスの学位をとって起業するというパターンが多いですね。マサチューセッツ工科大学(MIT)などにも、途上国向けのモノ作りのコースがあるんですよ。今、そういうところの卒業生が次々と起業しているんです。
枝廣:
日本にもそういうコースあれば良いのにね。
中村:
触発されて、小規模でやるところはいろいろと出てきていますが、まだ、定期的には行われていませんね。
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