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総務大臣補佐官(インタビュー当時) 太田直樹 聞き手 枝廣淳子 Interview13

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2015年1月、民間企業から総務大臣補佐官に転身された太田さん。
地方創生とICT/IoTの政策立案にかかわり、全国各地をまわられています。
今後の地域や国のあり方、人工知能がもたらす世界とは?そして、経済や価値観を変えていくためには何が必要なのでしょうか? お話を伺いました。

※ご役職、内容などはインタビュー当時のものです。

ICT×地方創生
リスクを感知し、つなぐ役割

枝廣:
総務大臣補佐官というのは、どのようなお仕事ですか?
太田:
総務省は総務庁、郵政省、自治省の3つが合併した省です。その中で私は2つの領域を担当しています。ひとつはずっとやってきたICT(Information Communication Technology)の分野。今でいうAI、人工知能も入ります。もうひとつは地方創生ですね。
私は奈良県の出身ですが、大学は東京にでてきましたから地方創生の感覚がまったくなくて、とにかく現地に行かないと、と思い、だいたい週に1回、のべ60か所くらいの地域をまわっています。できるだけ多くの方とお話をして、現場でどんなことをやっているのかを聞いています。
総務省のWebサイト
枝廣:
もともとは、コンサルティング会社にお勤めだったんですよね?
太田:
はい、25年間くらいはコンサルタントをやっていまして、ずっとテクノロジーの領域を担当していました。インターネット、家電やITなどをどのように産業や社会に使っていくかというお手伝いをしていました。
枝廣:
となると、ICTと地方創生といえば、まさに太田さんのためのお仕事ですね。
太田:
そうですね・・・実は霞が関にはそれまで行ったことがなくて、官僚組織なんて自分からもっとも遠いものだと捉えていました。はじめの半年くらいは、眼は開いていて、耳でも聞いているんですけれど、あまり自分の意見は言わずに仕事をしていました。
大臣からは仕事として2つのことを言われています。ひとつは自分が見えないリスクを感知してほしいということ。もうひとつは、官僚は皆優秀だが縦社会なので、横串を刺してほしいということです。
例えば、AIのリスクはどこなのか、地方創生でうまくいっていないところはどこかなどですね。意外だったのが、地域によっては仲が悪いところもあります。人口が7万人なのに観光協会が9つに分かれていてうまくいっていないとか、商工会議所と市役所の関係がよくないなど、そういう場をどうやってつなげていくのか、というような仕事をしています。

心理学からテクノロジーの世界へ
社会や組織の変化に立ち合う

枝廣:
コンサルタントをされていた25年というのは、まさに技術がさまざまに変化してきたのを目の当たりにされてきた時ですよね。
太田:
コンサルタントになったのが1990年だったんですが、日本ではちょうど規制緩和があって、NTTが分割されました。その後少したつとインターネットがでてきて、どうなるの?というところから、マイクロソフトのウィンドウズ95がでたときに徹夜で並ぶ人がでる。どんどんITが入ってきて、暮らしや仕事がガラっと変わる境目にいましたね。
枝廣:
大学では技術などを学ばれたんですか?
太田:
大学では実はまったく違うことをやっていまして。心理学を学んでいたんです。
枝廣:
そうなんですね。私も心理学だったんです。どういう領域を?
太田:
認知心理学なんですが、そのなかでも社会心理に近いほうです。当時興味があったのは「人はなぜ洗脳されるのか」。卒論も、中学校の先生に協力してもらって、「人の判断はどれくらいあやふやなのか」など勉強をしていました。
枝廣:
私は教育心理学だったのですが、「人はなぜ学ぶのか」をやっていました。近い分野ですね。
太田:
その時から、個人よりは社会や組織に興味があったんです。とはいえ、自分が組織や集団の中にいるというのは昔からだめなんです。遠足や修学旅行からは脱走して、会社に入ってからも社員旅行に行きたくない、おなかが痛いなどと子どものようなことを言って、行かない。とにかく集団のなかに一定時間以上いるのがだめなんですね。でも社会や組織にはすごく興味があります。コンサルタントという仕事を選んだのも、1万人、場合によっては30万人の社員がいる会社をどうやって働きやすくするか、結果が出るようにするのかを考える仕事がおもしろいなと思ったのがきっかけです。
枝廣:
「心理学」から「組織」に、次に「テクノロジー」というのはどうしてですか?
太田:
たまたま最初に担当したのが通信会社で、「通信」で社会が変わるなと感じました。そこでいろいろ勉強して、途中で経営も勉強するためにロンドンのビジネススクールに行き、それからボストンコンサルティングに転職したのですが、そのあたりからテクノロジーの領域が自分の一番の専門であると決めてやってきました。
枝廣:
そうやってコンサルタントをやっていらして、今政府にいらっしゃるのは?
太田:
かなり偶然ですね。今の私の仕事は初めてできた職で、私が第一号なんです。自分でポジションを探していたわけでもないですし、コネがあったわけでもありません。電話がかかってきて呼び出されて、何の要件かもよくわからずに出向いて、そして今の仕事になったんですね。
それまでの仕事は経営者のお手伝いなので、簡単にいえばどうやって儲けるかという仕事をしていたのですが、もう少しそこから仕事をずらしていきたいなと思っていたときに、たまたま、チリンとベルが鳴ったような感じで今の仕事にお誘いいただいたので、あまり家族にも相談せずに決めてしまい、あとでかなり家族問題がおきました・・・(笑)
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