希望は、自治体や草の根レベルの取り組みに
- 枝廣:
- 本当に大きな問題が各方面で深刻化しています。。。では、私たちはどうしたらよいのでしょうか? 希望の芽はどこに見いだせるのでしょうか?
- セヴァン:
- ええ、私たちは電球を替えることしかできないのでしょうか。もちろんそうではありません。私たちが持っている「変えるためのエネルギー」は、もっとずっと大きいのです。
- グローバルな舞台でのサスティナビリティに向けてのリーダーシップは、がっかりする状態ですが、自治体や草の根レベルでのリーダーシップはすばらしく、わくわくさせてくれます。
- 昨年私は、「エコシティー」という国際会議に参加しました。持続可能な都市をテーマにあちこちの都市で開催されている会議です。その会議で、新しい経済学を研究しているイギリスの研究者が「究極の持続可能な都市とは、"幸せ村"だ」と言っていました。世界中の都市の持続可能性についての何百ものワークショップが開かれていました。そのいくつかに参加した私は、「"幸せ村"は実際に存在している!」と思いました。
- その要素は、世界中の都市のあちこちに見られます。ベルギーには、今では自動車よりも自転車の数が多い都市があります。ブラジルでは、地域通貨を支えるために、何十ものコミュニティーバンク(地域の銀行)があちこちで誕生しています。世界中に、トランジションネットワークが広がりつつあります。英国のブリストルという町では、町長はその報酬の全額を「ブリストル・ポンド」という地域通貨で受け取っています。
- 私の故郷であるバンクーバーでは、都市の食料運動が広がっています。国の政府は情けない状況ですが、ICLEIという持続可能な都市のネットワークは、どんどんと活動を進めています。そして、ブータンのGNH(国民総幸福)、真の富は何かという対話。スロームーブメント。日本で会った多くの人たちも、変化を作り出すために活動しています。
イギリス・ブリストル市
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地域通貨「ブリストル・ポンド」
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「Love is the Movement!」
愛の力と希望
- 枝廣:
- 確かにそうですね。地域には本当に心強いたくましい動きがたくさんあります。ここに希望が持てるのですね。
- セヴァン:
- 今回、私は「love is the movement」という日本ツアーで来日しています。人間の世界を突き動かしているのは、経済的な収益、利益、そして経済成長です。しかし、同時に、人間の世界を突き動かしている全く別の力があります。人間の武器として最も強力な力――愛の力です。
- 愛の力は、「希望」と密接につながっています。希望は、大変な状況の中でこそ生まれてきます。希望を持つとは、「ナイーブである」ということでありません。希望とは、サバイバル(生き残り)なのです。私たちは、猛々しいほどの希望を持つ必要があると思います。希望に私たちを導いてもらう必要があるのです。愛と希望は、私たちを結びつけ、互いを出会わせてくれます。そして究極的には、持続可能な世界につながる道を示してくれるでしょう。
セヴァン・カリス=スズキ(Severn Cullis-Suzuki)
環境・文化活動家
父は世界的に著名な科学者で環境活動家デヴィッド・スズキ。9歳でECO(子ども環境NGO)を立ち上げ、環境活動を開始。12歳のとき、ブラジルで開催された「地球サミット」にECOの仲間たちと旅費を集めて参加。最終日に本会議で行った6分間のスピーチが世界中に感銘を与え、セヴァンは一躍環境運動の象徴的存在となった。以後、講演・執筆など国際的に活躍、「グローバル500賞」を受賞、「地球憲章」起草メンバーを務める。
米国イエール大学で進化生物学を専攻。カナダ、ヴィクトリア大学大学院で「民族植物学」修士。2008年、先住民族ハイダの青年ジャドソン・ブラウンと結婚。現在2児の母として子育てに励む一方、夫と共に伝統文化継承のための活動や環境活動にも力を注ぐ。
出演映画に『セヴァンの地球のなおし方』(配給アップリンク)など。
著書に『あなたが世界を変える日』(学陽書房)、『私と地球の約束~セヴァンのわくわくエコライフ』(大月書店)などがある。