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ホーム > インタビュー > 太田 直樹(5):インタビュー

総務大臣補佐官 太田直樹 聞き手 枝廣淳子 Interview13

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縮小していく貨幣経済のプロセスは楽しく、豊かに
仕組みを変える人たちへの期待

枝廣:
たとえばお金や経済は今のところ「見る」世界に属しているんでしょうか。
太田:
お金はそうだと思います。
枝廣:
人工知能恐怖論、不安論のひとつが本能的なものもあるし、49%の仕事はなくなるともいわれています。人間がやらなくていい仕事は人工知能がやると、そのとき人間はお給料がなくなってどうするんだという話になりますよね。そのあたりはどのようにお考えですか。
太田:
そうですね、お金、すなわち貨幣が支配的な歴史というのは最大で考えても200年くらいなので、そこから前はおそらく貨幣の部分は6割、それ以外の部分が4割ぐらいだったのでしょう。たぶんゆっくり、貨幣の世界が縮小していくと思っています。貨幣経済が拡大していくときのインセンティブ(動機付け)は、はっきりしています。歩かなくても車に乗れるとか、冬でも暖かいとか。いろいろわかりやすいインセンティブがありました。
それに対して貨幣経済がなくなっていくときのインセンティブというのはすごく感じにくいので、そのプロセスがとても難しいと思います。単純に明日が不安というのは、先ほどの話に通じるところがあります。便利なものが増えていく、それを働いて対価として買うというのではなく、違う世界をどうやって豊かに感じることができるか。それがあれば、貨幣経済が縮小していくときにもスムーズだと思うんです。それは文化や芸術など、より「見る」というところから遠いところにある理解、憧れ、楽しさみたいなものが伴っていないと、ひたすらつらいプロセスになってしまうかなと思います。
枝廣:
今のままだと強いられるか、これだと地球がもたないから、と無理やり自分を納得させていく方法ですよね。
太田:
ホラーストーリーのようにその道を進むというのは、僕はあまり好きではなくて、もう少し楽しい、豊かな道に見えるようにしていく可能性というのは、どうやったらできるかですよね。 
僕が少し楽観視しているのは、今たとえばシェアリングエコノミーという動きがありますが、20代の人と話していると、所有することに関しての執着がすごく低いですよね。
僕は今年50歳で、ある程度高度成長期の余韻があるなかで物心がついて、社会に出たらバブルが終わっていました、という世代です。このあいだ同じ世代の経営者と飲みながら話していたら、今の仕事が終わったら飲食店でもやりたいんだよね、と彼は言っていて、でもなかなか上の世代の人たちには言いにくいと。そういうのがたぶん僕らの世代なんですよ。上の世代の人は「もっとがんばらなきゃ!」「やれる!」という人がまだまだいらして、それは政治も経済もみんなそうですよね。僕の世代はまったく違うのもいいやって思っている世代なので、上の世代と若い世代との感覚に挟まれているなあと思います。
20代、30代の人たちはすごくおもしろいし、そういう人たちが自分たちのライフスタイルをつくっていったらいいじゃないって思っています。上の人が無理やり変わるとは思えないですし、自分は「まあまあ」って言いながらうまくやって、下の人たちおもしろいよね、という感じ方をしています。
枝廣:
世代交代によって自然に主流の人たちが変わるということですね。
太田:
現場をまわっていると家もなく、何もなく暮らしている人と会ったりします。彼らは毎回帰る家も違ったりするんですけれど、すごい不幸にも見えない。今は過渡期だと思いますが、いろいろな部分に幅があって、肩肘張ってやっている人もいれば、自然体でやっている人もいる。すごいなって思うんですよね。
枝廣:
そういう人たちが社会の主流になってくると、GDPを成長させなきゃ、ということではない政治や経済になってくるでしょうか。
太田:
そうですね。あと、よく3つの「Y」、「夢、欲、やる気」がない、と言われることに対してものすごく反論したいという人もいました。そこはもうベクトルが違う話ですよね。団塊の人たちから見れば、やる気もないし、夢も欲も何もないということになるんですけど、そこはもう、交わらないなという風に思っています。彼らは彼らなりに野心があって、その中の人たちというのは本当にガラッと仕組みが変わるようなことをやってのける人たちです。そういう野心を持った人が出てくるとすごくおもしろいなあと思いますね。

「経済成長」というトレンドからの脱却を宣言する

枝廣:
上の世代の人たちはまだ経済成長を信じている世代ですが、その次の世代の人たちは、例えば、どこかで国として経済成長を追い求めるのをやめるとか、価値観を転換させるとか、何か変えていくようなことを考えているのでしょうか?
太田:
今思いましたが、「終わりました!」という宣言があってもいいでしょうね。
枝廣:
少しずつ移行しようとはしているのだと思いますが、そろそろGDPではなく、「一人当たりのGDPで考えましょう」とか「新しい時代に日本は先に行きます!」みたいのがあるといいですね。
太田:
最近おもしろいなと思ったのは、グーグルにあるNグラムビューアー(Google Ngram Viewer)というものです。過去500年くらい、15世紀から現代までに発行された数百万の書籍から単語検索ができるものです。そこで2つ検索してみたんです。ひとつは「Growth」、もうひとつは「Health」。あらゆる当時の本のなかで、その言葉がどれだけ出てきているかがわかるんです。
おもしろかったのは、GrowthがHealthを抜いたのが1900年なんですね。でも1982年からGrowthという言葉は急激に減るんです。Healthというのはずっと横ばいだったんですが、1970年くらいの高齢化が始まった頃からどんどん上がって、21世紀の手前くらいでGrowthを抜いているんですね。Growthはもう関心をもたれていないということです。
グラフ:グーグルNグラムビューアー「Growth」
グラフ:グーグルNグラムビューアー「Health」
偶然だと思いますが1982年というのはバラトングループが最初に集まった年じゃないですか。これがおもしろいですよね。そういう動きをキャッチしている人たちは、少なくともGrowthに関しては違うなというのを感じていた。それから30年ですが、まだ慣性力ってはたらいているんですね。一番慣性力がはたらいているのは国だと思いますね。昔の、「Growth=上がる」という、坂の上をまだみている人がいっぱいいる。社会全体でみるとそれはトレンドなのでしょうが、でも違うよっていう話をどこかで宣言したらいいのかなと思います。
※バラトングループ:『成長の限界』の執筆者であるデニス・L・メドウズ、ドネラ・H・メドウズが1982年に創設したグループ。システム・ダイナミクスや持続可能性の研究者・実践家ら300~400人のメンバーからなる。枝廣も2003年から参加。
枝廣:
経済が先にあってその中で暮らしをできるだけ折り合いをつけていこうと多くの人は言いますが、この発想を変えつつある人や企業もでてきていますよね。
太田:
たぶん自分たちが目的だと思っていたものが実は手段で、しかも手段のひとつでしかない、みたいなところに気づき始めたんでしょうね。利益もそうだと思いますし、お金もそうでしょう。そこは、逆が起こりやすいんですね。本来手段だったものが目的になることのほうが何百倍もたくさん起こっています。最初に違うよと言うのは勇気がいる。株主がいるなかで、「うちの会社は利益が目的ではありません」と言うのは難しいですよね。
枝廣:
最近、ダノンの社長がもう規模をもとめないとか、トヨタの社長もそういった発言を始めていらっしゃいます。気がついている人たちはいて、少しずつ言える環境になってきているのかもしれないですね。
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