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ホーム > インタビュー > 高野 翔(3):インタビュー

JICA(国際協力機構)(Schumacher College留学中) 高野翔 聞き手 枝廣淳子 Interview14

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学ぶべきものは体のなかに

枝廣:
細胞は単体では生きていけないようにプログラムがされているんですか?
高野:
細胞は単体だけで、必要なエネルギーや物質、情報など、自分が生命体として維持されるために必要なものを保つ、ということができないのではないかと思います。単体の細胞だけでできることは限られるし、担える役割もごくごく一部なので、ほかの細胞群と補完することではじめて生存ができる。
また、正常細胞は決まった回数だけですが増殖することができます。ただ、細胞同士等の物理的な接触があってはじめてスイッチがはいり増殖が可能となります。足場依存性といって、細胞は足場のような物理的に何か固定したものと接触していないと増殖できないという特色をもっています。人間社会と同じかもしれませんね。何かしっかりとした土台や足場や仲間がいないと成長できないのは。正常細胞は利他性を含む多様なコミュニケーションをもって豊かな細胞社会を形成し生命を維持させる。それが、生命の神秘であり美しいところなんだとおもいます。
その正常細胞と真反対にあるのががん化したがん細胞です。がん細胞に関してはまだまだ分からないことだらけですが、がん細胞は他との接触や関係性を必要とせずに、無限に自分だけで増殖することができるんです。正常な細胞には、増殖の回数上限、つまりは寿命があって、新しい細胞に役割を任していくという循環がありますが、がん細胞にはそれがない。足場も必要ない。まわりの正常細胞の秩序を切りながら、自己を拡大していく。そして、その拡大が細胞の集合体であるヒト個体の生命を死においやり、自己も死へと向かうことになる運命をたどる。短期的で無秩序な快感を伴うような増殖の追求が、長期的で調和した命の定常状態を壊してしまう。
写真:生体環境に近い3次元のゲルの中で観察したがん細胞

生体環境に近い3次元のゲルの中で観察したがん細胞

なぜ正常な細胞ががん細胞になるのかというのは、いくつもの諸説がありますが、その一つとして、細胞間のコミュニケーション不全があります。細胞同士のコミュニケーションを担っている部分にギャップ結合という物質が細胞間を行き来できるようなトンネルのようなものがあるのですが、その結合になんらかの遺伝子変異が起こってしまって、相互のコミュニケーションがうまく取れなくなってしまい、細胞のがん化が進行するという説があります。もちろんこれが原因のすべてという単純な話ではありません。
枝廣:
人間の体ってすごいんですね。
高野:
すごいですよね。学ぶべきものは体のなかにたくさんありますね。一つ一つの細胞同士のコミュニケーションの総体として我々の体が存在しているわけなので、神秘的ですよね。人間世界も一緒で、コミュニケーションの総体が人間社会ということだと思うんです。

「環境」の影響を受ける細胞

枝廣:
今までこんな風に細胞の話をしてくださった方はいなかったです。個体にしても集合体にしても、コミュニケーションができるかどうか、エネルギーや情報のやり取りができるかどうか、それによって生かされているということですよね、細胞社会も人間社会も。
高野:
そうですね。細胞社会も人間社会も相似関係なのだとおもいます。コミュニケーションの循環が止まってしまったかたちががん化なので、人間社会に当てはめると、コミュニケーションがうまくいかない、循環しない社会というのはある種のがん化のシグナルというか、そうさせてしまう社会環境がおかしいということかもしれません。がん化の進行も細胞を囲んでいる様々な環境条件によって変わるんですね。社会のその時の雰囲気によって、人間社会ががん化してしまう、周囲と円滑なコミュニケーションをとることが難しくなってしまう人が増えてしまう、ということはあり得るのだとおもいます。
正常な細胞が寿命があるのに対して、がん細胞は無限に増殖すると言いましたが、同様に京都大学の山中教授が作成に成功したiPS細胞(様々な細胞へと分化することができる万能細胞の一種)も無限に増殖する能力をもっています。でもiPS細胞の場合は、特定の刺激、一種のコミュニケーションともいえるかもしれませんが、それによって、医療の目的に応じ、心臓の細胞になったり神経の細胞になったりと、求められる必要な役割へと変化していくことができる細胞なのです。無限に増殖するという同じ機能をもっているのに、がん細胞はコミュニケーションをうまくとれないことで、何に必要とされているかという役割を自己で把握することができずに、人を死に致しめる。一方で、iPS細胞は周りの細胞とコミュニケーションをとれることで役割を自己確認し、未来の医療として人々の命を助ける、という違いが出てくるんですよね。
枝廣:
本当の意味でのがん患者というのもそうですし、人間社会の「がん」という意味でも同じように捉えられますね。がんはどうやったら治せるのでしょうか?
高野:
がん細胞が体内にできたときにそのがん細胞を100%取り除くということは現代医療ではできないのだと思います。そこで大事なのが環境です。体内環境であり社会環境。生きている限り紫外線などで遺伝子変異はどうしてもおきますので、がん細胞の発生を0%にしようということは現実的ではありませんが、がん化を進めないとか発生する可能性を下げるという環境条件は必ずあると思います。そのような環境をどのようにしてつくっていくか、体内のがんも人間社会のがん化も同じところにいきつくような気がしますね。
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