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ホーム > インタビュー > 高野 翔(8):インタビュー

JICA(国際協力機構)(Schumacher College留学中) 高野翔 聞き手 枝廣淳子 Interview14

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人々を幸せにする
循環する経済をめざして

枝廣:
細胞の勉強をして、ブータンに行き、いろんな問題意識を持たれた高野さんが、イギリスのシューマッハ・カレッジに1年間留学をされると伺いました。今度はどういうことを学ばれるんですか?
高野:
経済というものをとらえ直す必要があると思ったんです。ブータンでも幸せのガバナンスとしてGNHという防波堤があるのですけど、同時に世界の周りの経済に大きな影響を受けているので、ブータンらしい経済、地域経済を作っていかないと、人々の幸せある生活というのは難しくなってきているなと感じていました。
そういったときに、私としては農業プロジェクトに「経済と人々の幸せが循環するかたち」をみたわけですよね。それが本来の彼らの経済だし、日本もかなり近いものがあると思っています。人々の幸せを循環させる経済のあり方、健康や教育、文化、地域活力、環境にも好循環がまわっていく経済のあり方というのを、考えてみたいと思ったんです。
まず、現代社会においてお金は大事だということは否定できません。ただ、お金を稼ぐという行為が他の人々の幸せを支えている要素を下げるのではなくて、それを増やし循環させるかたちがあり得ると思うんです。それが健全な経済、ペルジョアです。たとえば文化を守ることが仕事となってお金を回すこともあるわけですし、地域のコミュニティを強くすることで地域内経済循環がよくなり人々の生活水準を上げるということもあり得るわけです。そのような経済循環の姿を自分のなかで持ちたいなと思いましたし、そういう道筋みたいなものを自分のなかに景色として入れたいなと思いました。そうでないと現在の経済の向かう先というのはどちらかというと不安なほうが多いと感じます。ブータンですらもそうです。
枝廣:
主流は生活水準を上げることで、それに伴うネガティブをいかに少なくするかというのが企業の活動で、社会のネガティブを少なくするためにCSRや社会貢献活動、という見方がどうしてもあります。経済が回るというのは本当にあるべき姿ですが、あまり例を見たことがないですね。
高野:
そうですね。先日、「和える」という0~6歳の子ども向けの日本の伝統文化を体現するおもちゃや産品を展開する会社の矢島里佳さんがブータンにきてくれたのですが、矢島さんの仕事はまさに伝統文化を守り次の世代に繋ぐということで稼ぎ、経済を回しているんですよね。経済との一体性を失ってきた文化や伝統や環境という人々の幸せに影響する要素が、経済と新しい関係性を結びなおして、経済と両輪で好循環、まわっていくというような事例は、日本でどんどん出てくるのではないかなと思います。
枝廣:
がん細胞単体が悪いというよりは、その環境とか培地とかが大事ですものね。
高野:
そうですね。GNHは培地の条件を測っているようなものですからね。1個の指標だけで培地を測っていてもわからない。9つの領域の包括的な条件を培地の中でみているので対応策もできるし、予防策もできます。
枝廣:
アメリカでベネフィットコーポレーションという新しい会社のあり方が広がっています。日本の上場企業は株主法によって株主利益を最大化することを義務付けられているので、株主利益を下げない程度にしかCSRや社会的な取り組みができません。アメリカのベネフィットコーポレーションは、州レベルの会社法なのですが、目的が株主利益最大化ではなく社会の利益の最大化が目標なんです。今アメリカで3000社以上の会社が登録しています。何を生み出すべきか、培地を変えてあげると企業がいきいきと動く例ですね。
高野:
培地を変えることで細胞同士のコミュニケーションが強くなる可能性がありますよね。我々は人々が幸せを感じられる健全な培地とその状況を測る指標を持ち得ることが必要ですね。
枝廣:
おっしゃるとおりで、培地と測る指標を変える取り組みや試みというのが大事なのでしょうね。それが変わらないと経済が変わらない。そういう意味でいうとブータンは本当に指標という点で世界にすごい影響を与えています。
高野:
本当にシンプルで、大事な宝物を第4代国王が残されたのだと思いますね。
枝廣:
細胞の話、ブータン、シューマッハ・カレッジなど、いろいろおもしろいお話をどうもありがとうございました。
Profile

高野 翔(たかの しょう)

JICA(国際協力機構)

写真:高野 翔

1983年、福井県生まれ。
2009年、JICAに入構し、これまでに約20ケ国のアジア・アフリカ地域で持続可能な地域づくりを担当。直近(2014-2017)では、ブータンにて人々の幸せを国是とするGross National Happiness(GNH)を軸とした国づくりを展開。現在は、ブータン政府におけるGNH政策の外部アドバイザーも務める。地元福井では、まちづくり活動を行っており、2013年、福井の人の魅力を紹介する観光ガイドブック「Community Travel Guide 福井人」を作成し、「グッドデザイン賞」を受賞。2017年8月末からブータンから英国に渡り、スモール イズ ビューティフルを執筆した経済学者 E. F. Schumacher の系譜を引く、Schumacher Collegeで新しい経済学を学んでいる。

JICA (国際協力機構)
https://www.jica.go.jp

「Community Travel Guide 福井人」(Web版)
http://communitytravel.jp/fukui/
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