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半農半X研究所代表 塩見直紀 聞き手 枝廣淳子 Interview04

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高まる危機意識と「転機」

枝廣:
先ほど、「世の中が半農半Xを認める、もしくは求めるようになってきた。厳しい時代になってきた」とおっしゃっていましたが、何がどう厳しくなって、半農半Xを受け入れる、もしくは求める世の中になってきたと思われますか?
塩見:
20年前から、枝廣さんや僕らはオイルピークのことは考えたと思うんですけれども、それが現実化しています。
資源、食料の問題に加えて、気候の変化というのも結構大きいと思います。今までは、「去年変な天気だったな」というのが、変なのが当たり前になってしまいました。それが数年、特に顕著かなと思います。
枝廣:
そういう流れを見て、一般の人たちも、たとえば自分の食べ物とか、これまではお金で買えばいいと思っていたけどそうではないという、そのあたりの危機意識でしょうか。
塩見:
そうですね。リーマンショックもあっただろうし、多くの人が仕事の面や、お金の面でもいろいろなことを感じたり、気づきつつあります。
5年ほど前に書いた『半農半Xの種を播く』のなかで、「やっぱり急がないといけない」という思いで「5年以内のアクションを」ということを書かせてもらいました。
というのも、農家の平均年齢が、数値以上に70代とか80代とどんどん上がっているので、5年以内にバトンタッチして、農業の技術とか知恵とかを引き継がないといけない。バトンタッチには時間がかかるかと思うし、早めのアクションが重要なので、焦らず着実に、いい形で引き継いでいけたらと思います。
3.11もあって、コミュニティの問題や農のあり方、エネルギーなど、大きく変えていく転機だと思っています。これからはエネルギーを自給していかなければいけないし、半農半Xをしながら電気を売電するような「半農半X+電」ということも言われるようになっていくでしょう。そういう意味で、これは本当にラストチャンスだし、これ以上の大きなことはないと思います。
これからの時代は、急がないといけないし、でも着実にゆっくり「悠々と急げ」という言葉のように、緩やかに変わっていければと思います。

すべてのひとに「X」がある。
ほかの人の「X」を応援しよう。

枝廣:
半農半Xという言葉だけ聞くと、大地と自分の天命、ミッションとのつながりといった、大地と自分との閉じられた関係で解決しそうなイメージですが、ご本でも書かれているように、それから生まれるつながりとか、コミュニティとか、そういった要素もすごく大事だなと思います。
塩見:
やはり、住んでいる場所を愛しているかというのは、これから大事になると思います。今回の震災で感じたのは、東北の方が地域を愛する感じというのは全然違うなということです。愛する場所、現在住んでいる場所が好きではない方も愛していく。そのためには、まなざしとか感性を取り戻す必要があって、意外といい町なんだなというのを取り戻さないといけないかなと思います。理想は大好きな町で大好きな仕事をすることですね。
僕は、すべての人にXがあると考えているので、東京で満員電車に乗るのはあまり好きではないけれども、この人たちみんなにXがあるかと思うと楽しくなります。
人間だけではなくて、ゴーヤにはゴーヤのミッションがあって、梅には梅の、お茶にはお茶の、ビワだったら薬の王様と言われていますので、葉っぱも種もXがある。すべてのものにXがあって、それが表現されていく。そういう時代が来たらいいなと思っています。
そういう意味では、住んでいる場所はとても重要です。自分が住んでいる所から半径3キロぐらいの、徒歩や自転車で軽く行ける所のいいところを探すと、地域を大好きになるし、それができると楽しくなる。日々感受性が高まっていって、次々にすてきなものが見つけられますし。
枝廣:
「あるもの探し」ですね。
塩見:
ほかの人のXを見つけたり、応援するのも大事だと思っています。レイチェル・カーソンが、「子どもの周りにセンス・オブ・ワンダーを応援できる人が1人は必要だ」と言うように、周りはXの応援団であるという意識を持てばいいと思います。

僕のワークショップのなかでも、大好きなことや得意なこと、気になるテーマ、ライフワークを3つ書いてもらうミニワークをさせてもらっています。そして、その3つのキーワードをみんなの前で語ります。なかなか想いを聞いてもらえない時代、話す場がない時代になっているので、話し合う、傾聴し合うというのは、とても重要なことではないかなと思います。

3つのキーワードもみんな多様で重なりません。もしかしたらほんとうに世界で1人かもしかいないと思うことが結構あります。写真が好きだけだったら、上には上の人がたくさんいるけれども、でも、第二、第三のキーワードを組み合わせると、オンリーワンな存在というのがわかってきます。さらに活動舞台(市町村名や地域名など)も書くのでほんとうに唯一無二の存在だとみんな感じられます。

僕はそれを、生命多様性、生物多様性をもじって「使命多様性」と名づけているんですが、人はほんとうに多様な存在だなと思います。

「X」で食べていくのは大変だけれど、
はじめ方は、ある。

枝廣:
たとえば食べ物は半農で作るとしても、現金収入は必要だから、それは半Xのほうから得る。やりたいこととか、自分が得意なことは見つかったけど、それを、お金をもらえる仕事に結びつけるのはちょっとハードルがある。そこが難しいですよね。
塩見:
講演をしていますと、ある方から、「半農半Xはエリートでなくてはできないんじゃないか」という質問を受けたり、「Xが明確で、Xがある種プロフェッショナルな人はやっていけるかもしれないけれども、万人はどうかな」ということを言わたりもします。確かにXで食べていくのは大変だけれども、職業でなくても、まずはボランティアから始める、というのでもよいと思います。
もちろん理想はフルタイムですが、ちょっとの時間、何か福祉的なことをされるのもいいし、少しでも自分にとって輝ける時間があるだけでも生きがいがありますし。
枝廣:
発明家の藤村さんの非電化工房に見学に行って、いろいろお話を伺う機会があったのですが、藤村さんは『月3万円ビジネス』という本を出されていて、月に3万円稼げるビジネスを10個持っていれば、十分それで食べていける、とおっしゃっています。
本当はフルタイムがいいというのはこれまでの価値観だけど、ほんとにそうかどうかも、これから怪しい。それより、3万円ずつ稼げるのを10個持っていたほうがきっとこれからいい、と。自分のミッションの組み合わせが、30万円を生み出すのはすごく難しいけど、3万円だったら生み出せるかもしれないですよね。そうやって300万あれば十分だし、食べ物を自分で作れればなおよいですよね。
エネルギーやお金に頼らない暮らしを提案する「非電化工房」(栃木県那須塩原)
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