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富山市長 森雅志 聞き手 枝廣淳子 Interview07

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花束を抱えて電車に乗ると運賃が無料に!
「私も住みたい」と言ってもらえるまちづくり

枝廣:
その問題意識を実践に移していく上で大事なポイントは何なのでしょうか?
森:
きちんと実態を見て都市経営をやっていくことだと思います。たとえば、企業誘致ができてそこの社員が移ってきても、それで満足していては駄目です。社員の家族も一緒に来てくれないと。最近企業の経営者に会うと、「家族で移り住めるような都市でないと、工場のラインを増やしたり、新たな展開はしたくない。単身赴任者ばかりの現場は作業性が悪い」と言う方が多いですね。
だから、「社員や社員の家族から選ばれる都市像」というものを、きちんと明確にし、そういうまちづくりをしていくことです。そうすれば、人口も減るにしてもゆっくりと減ります。そうすると、若い人から見ても、「あの都市なら将来も安心」と思える。ここがすごく大事です。
介護保険料や国民健康保険料が高いところは安心して住めないでしょう? 総合力として、教育水準が高くて、福祉の水準もある程度きちんとしていて、犯罪が少ないなど安心・安全度が高く、食材、水、空気もよくて。そういう場所だったら、外から見ても、「あ、いいな」と思うでしょう? 「お父さん、富山だったら、私もついて行く。子どもも連れて行きましょう」となる。そういうことだと思うのです。
だから富山市は、市の魅力を高めることをいっぱいやっていますよ。日本で一番進んだLRTのシステムを動かしています。パリのようなサイクル・シェアのシステムもあります。予算を使って、中心部を花で飾っています。それからね、富山市は、町の中で花束を買って電車に乗ると無料なんですよ。おしゃれでしょう?
コミュニティサイクルシステム
ハンギングバスケットやバナーフラッグ等の設置

左:コミュニティサイクルシステム/右:ハンギングバスケットやバナーフラッグ等の設置

枝廣:
ステキですね~! 誰のアイディアですか?
森:
僕のアイディアです。何をねらっている制度かわからないかもしれないけど、今おっしゃったでしょう、「ステキですね」と。それが大事なんです。富山には企業の研究所もいろいろありますが、研究者に富山への転勤の辞令が出たとき、家族が「富山だったら私も行く」と言ってくれる。これ、すごく大きな違いです。
僕は、10年ずっとそういうことを考えてきました。全体として人口が減る中で、減るにしても緩やかに減って、若い人から見ても安心を感じられるようにしたい。社員の家族からも選ばれるようにしたい。そうすることが、都市の力の持続性につながる。地方都市であっても、一定程度、活力を維持でき、再投資もでき、税収にもつながります。

市中心部の地価を支え、高齢者を元気にするLRT

森:
それから、富山市の街の中には、LRTが環状に敷設されていて、1日中路面電車がぐるぐる回っているのですが、外国の人は無料なんです。ホテルに無料のチケットが置いてあります。そして、県外から来た方は半額です。いいでしょう? おもてなしなんです。
このLRTの周辺に、公共施設を造り、民間投資も呼び込みます。中心部は地価が上がり、市の財源を支える税も増えます。
枝廣:
実際にはどうなのですか?
森:
この環状線が動き始めたのは2009年12月ですが、10~12年の3年間のデータがあります。面白いのはね、男性の乗客数は横ばいなのですが、女性がすごく増えているんです。今、乗客の7割は女性です。なかでも、65歳以上の人が61%も増えている。つまりこれは、外出機会をつくった、ということなんです。
環状線が単なる移動手段ではなく、人々の暮らし方に刺激を与えることになり、元気な高齢者をつくることにつながっているんです。この人たちが電車で中心商店街に来る目的は、ほとんどが買い物です。3年間で、中心市街地での滞在時間が15%伸び、消費金額は2割伸びています。車で町へ買い物に来る人よりも、電車で来た人のほうが消費金額が大きいんですね。
枝廣:
なぜなのでしょう?
森:
最初はわからなかったのですが、飲食なのですね。だから平日は自動車で来る人と変わらない。でも、休日は、電車で来ると、駐車料金なども気にする必要がないし、お昼にもビールを飲んだりできる。夕方買い物が終わってから、ご夫婦でお酒を楽しんでいったりする。その結果、中心市街地でのアルコールの消費量が2割伸びているんです。
環状線開業後における利用者の行動形態の変化--外出機会が増えた目的--

出典:H23市内電車利用者へのアンケート調査より

森:
これが果たして、水準が良くなったかどうかは、人によって見方が違うでしょうけど、僕自身は、目指しているヨーロッパ型の都市に向けての大変よい傾向だと思っています。
富山市ではJRの時代には乗客数が大きく減少していたのですが、LRTシステムに変えたあとは急増しています。データを見ると、2.1倍に増えた理由の1つは、昼間の時間帯に50代、60代、70代が乗っているんです。高齢者が楽しんで乗っている。これが大事なんです。

プラネタリウムには、「カップルは無料」の日があり、市内中心部の公園では、高齢者が野菜を育てる!

森:
LRTは高齢者の外出にすごくよい効果があります。持続性の高い町にするために、要介護状態の高齢者を増やさない、せめてその増加を鈍化させ、重篤にはさせない。それが今の若い人たちの将来の負担を抑えることになります。「今の高齢者を元気にすることが、今の若者の将来負担を抑えること」だと思って、面白いことをいっぱいしていますよ。
高齢者向け「女子大生と行く秋の街歩きツアー」
森:
たとえば、高齢者向け「女子大生と行く秋の街歩きツアー」。富山大学と一緒に開発した、ブレーキ付きの安全な補助具を使ったりして歩いてもらう。それから、祖父母と孫が一緒に、ファミリーパークや博物館などの市の施設に行くと、入場料は一切無料になります。これ、お孫さんはうれしいでしょう? ママと行ったら、ソフトクリーム1回しか買ってくれないけど、おばあちゃんは3回くらい買ってくれる(笑)。
祖父母のほうも、孫と出かけるとうれしいでしょう? おじいちゃんの財布も緩むでしょう。園内に小さなオモチャを買える機械が置いてあるのですが、その売り上げが1.6倍になりました。
ほかにもいろいろなことをやっていますよ。プラネタリウムでは、月に2回ぐらい、「カップルで来ると無料」という日を設けています。デートするのに、プラネタリウムっていいじゃないですか? 僕は「途中5分間ぐらい真っ暗にしよう」と言っているのですが、それはさすがに、学芸員が嫌がって実現していません(笑)。
それから、都心部にある街区公園で、高齢者に野菜を作ってもらうということもしています。これは最初、国土交通省からは「公園で、みんな勝手に野菜を作るのはいかがなものか」とちょっと抵抗がありました。でも、公園法で禁止しているわけではなく、たしかに勝手に耕して野菜を作ったら困りますが、市が奨励して地域の高齢者が公園で野菜を作るならよいでしょう?と了解を取り付けて、今年度、3つの公園で始めます。
野菜が育っていくことは、すごく高齢者に生命力を与えてくれます。その野菜を、町内で子どもも含めてみんなで集まって、芋煮会をするのもいいですね。市民農園というのもありますが、大概は郊外にあって、町の中に住んでいる高齢者は行けないですよ。
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