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ホーム > インタビュー > 森 雅志(3):インタビュー

富山市長 森雅志 聞き手 枝廣淳子 Interview07

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データをベースに都市を経営する

森:
そういうことをやるためにも、GISの市の基図に、住民基本台帳のデータをマッピングしたんです。そうすると、たとえば65歳以上がどこにたくさん住んでいるかがわかります。今まで、何となくの感覚でしかとらえられなかったデータですから、画期的なことです。未就学児がどこにたくさんいるか、すぐ出ますから、通学区域をどうするとか、スクールゾーンどう決めるかという議論もやりやすくなります。都市経営にいろいろな面で役に立ちますから、今では総務省が全国の自治体にも勧めています。
枝廣:
現状をしっかり把握して、施策を作っていくのですね。
森:
そうです。そうすれば、市民にもなぜ中心部に投資するかわかるでしょう? 高齢者が実数として多いわけだから、電車を敷設してこの人たちが移動しやすい環境をつくることは極めて妥当だ、となるわけです。
高齢化に対応したまちづくり(高齢者分布図 H24)

コンパクト・シティ戦略と
ついに、人が集まり始めた中心市街地

枝廣:
中心市街地活性化などのいろいろな取り組みの成果はどうなのでしょうか?
森:
中心市街地は、ずっと転出超過だったのですが、5年連続転入超過になりました。
中心市街地(都心地区)の社会増減(転入-転出)の推移
枝廣:
素晴らしい!
森:
日本では、120くらいの都市が中心市街地活性化基本計画を出していますが、成果としてはおそらく、富山市が突出して高いと思います。
それから、郊外の駅周辺に「居住推奨エリア」を定めているのですが、こちらも去年ついに、転入超過になりました。その結果、富山市全体の児童数は減っているのですが、中心部の小学校では、減少から増加に転じました。
枝廣:
「居住推奨エリア」とはどういうものですか?
森:
公共交通沿線の居住人口を増やす目的で、富山駅を中心とした19の公共交通軸に沿った約3090ヘクタールの公共交通沿線居住推進地区を設けているのです。中心部と公共交通の沿線で、「バス停から300メートル」とか、「駅から500メートル」といったところですね。まちなか居住推進事業として、一戸あたり、共同住宅は100万円、戸建て住宅は50万円といった助成を出しています。また、公共交通沿線居住推進事業として、一戸あたり、共同住宅は70万円、戸建て住宅は30万円といった助成で後押ししています。
都市マスタープランでは、公共交通沿線居住推進地区の人口について、平成17年の28%を、20年後に42%に引き上げようとしています。現在は31%まで増えてきました。こうやってコンパクトシティ化を進めていけば、将来市民の負担を抑えることができます。
枝廣:
中心部の人口が増えてきているのはすばらしいですね。ほかにもコンパクトなまちづくりの成果が上がってきていますか?

市の財政にとっての
中心地の大事さを明示して"説得責任"をとる

森:
ええ。たとえば、富山市全体の地価は、全国的な基調と同じく下落していますが、中心部の地価は横ばいで維持しています。これは、財政的にはすごく大事なんです。
富山市の歳入全体に占める税目の構成比を見ると、リーマンショック以降市民税が落ちています。その結果、不動産に対する固定資産税と都市計画税の構成費が大きくなっています。このとき、地価が下落すると、この税収も減少することになります。

地区別に見れば、中心市街地の面積は全市の0.4%ですが、全市の固定資産税と都市計画税総額の22.2%を収めてくれていることがわかります。ですから、ここに投資することが一番合理的なのです。

こういうことをちゃんと説明しながら、選択的・集中的な投資をしています。特に、郊外に住んでいる人に説明して回ることがすごく大事です。「皆さん、中心部にばかり電車を走らせたり、花束を持ったら電車が無料とか、花で飾ったりして、不公平だと思っているでしょう? でも、この数字を見て下さい。
この上中心市街地の地価が落ちると、市の財政が厳しくなるから、行政サービスの水準を落とすか、市民税を上げるかしないとやっていけなくなる。だから、不満はわかるけど、中心地からの税収があるから農村や郊外への特別な補助もできるのです」と。「皆さん、不満でしょう?」と言ったら、「不満です」と答えが返ってきます。「でも、しょうがないでしょう?」と言ったら、みんな「しょうがない」と言います。
きちんと市民を説得できるかどうかです。多くの首長は、それが嫌だったり怖いのでやらないのでしょう。「何であそこばかりやるんだ。おれのとこにも」という圧力や声に対して説得しきれないのです。
長く、「行政に求められるものは説明責任だ」と言われてきましたが、説明責任で止まっては駄目なのです。必要なのは説得責任です。「反対」と言う人たちをも説得する。そして乗り越えて、将来市民のために必要な施策を進めること。それが行政の責任だと思うのです。
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