経済成長のジレンマ
私たちは、地球から農作物や水、木材や鉱物などさまざまな資源を取り出し、加工して消費することで暮らしや経済活動を営んでいます。私たちの暮らしや経済・社会から出るごみ(CO2やさまざまな廃棄物)は、地球に吸収してもらっています(宇宙に捨てるわけにはいきませんので!)。
さて、私たちの経済活動を「供給源」かつ「吸収源」として支えてくれている地球は、46億年前に誕生して以来、大きくなっていません。つまりその大きさには限りがある――「有限」なのです。
私たちの経済活動は、有限の地球から資源を取り出し、廃棄物を吸収してもらって成立している限り、無限に増大することはできません。地球の「供給源」も「吸収源」も有限だからです。経済が成長していけば、いつか必ず、地球の限界にぶつかります。
この50年間に世界経済は5倍以上に成長しました。それに伴い、食糧の生産量は約2.5倍に、水の使用量は2倍に、パルプと紙の生産のための木材伐採量は3倍に増えています。
世界中で紙の需要はどんどん増えていきます。もしその原料の木材(森林)が同じスピードで成長できなかったら? 世界の森林は減っていきます。まさにいまそれが起こっているのです。降った雨が地面から浸透し、地下に溜まる速度よりも速いペースで地下水を汲み上げたとしたら? 地下水はいつかからっぽになり、それ以上汲み上げられなくなるでしょう。いままさに世界各地でそれが起こっているのです。
地球は有限です。私たちの経済活動はその地球が支えられる範囲内でしか、続けることはできません。しかし、現在すでに、私たちの経済は地球の支えられる限界を超えてしまっています。それでも、私たちは今なお経済を成長させようとしているのです。
「エコロジカル・フットプリント」という興味深い指標があります。世界が必要とする食糧や木材、魚や都市部の土地などの資源を提供し、人間活動から排出される二酸化炭素を吸収するために必要な土地の合計面積として計算します。これを実際に利用できる土地面積と比較すると、「人類が地球に対して要求しているもの」と「地球が提供できる能力」との関係がわかるというものです。
現在、人間が消費する全資源を再生可能な形で生産し、人間が生み出す二酸化炭素排出を吸収するためには、地球1.5個分の資源が必要となっています。地球1個では足りなくなっているのです。
(出典)WWFジャパン「生きている地球」より
http://www.wwf.or.jp/earth/livingearth/004.html
現在の規模での経済活動を続けるのですら持続可能ではないのです。ましてや、「経済成長を続けていくことは持続可能ではない」ことに疑問の余地はありません。
「経済学者が地球自体も同じ速度で成長できることを示してくれたら、経済が無限に成長する可能性があることを受け入れよう」
ハーマン・デイリー(元世界銀行シニアエコノミスト)
- 経済成長は持続可能ではない
- 脱経済成長は不安定を引き起こす
- デカップリングでは問題が解決できない
- ではどうしたよいのだろうか?