経済成長を考える

脱経済成長は不安定を引き起こす De-growth is unstable.

地球の限界を超えているにもかかわらず、まだ経済成長を!という人々は、「経済成長を止めたら、失業者が増えてしまう。生活水準が落ちてしまう。社会が混乱し、衰退してしまう。そういった事態を避けるためには、経済成長を続けるしかない」と言います。

確かに、現在の経済は「成長し続けないと倒れてしまう」構造になっています。たとえば、このループ図を見てください。

ル-プ図

今の経済は、技術によって労働生産性を上げ、省力化によるコスト削減が利益につながり、利益は投資を生み、投資によって技術をさらに開発して、ますます労働生産性を上げる......という自己強化型のフィードバックループで「利益と労働生産性がどんどん高まる」構造にあります。同時に、コストが下がれば、価格も下げられるので、それによって需要が増え、売上が増えて利益が増える、という自己強化型のフィードバックループもあります。また、需要が増えると生産規模が大きくなることで、コストが下がり、価格も下がるので、ますます需要が増えるという自己強化型フィードバックループもあります。こういった自己強化型フィードバックループがいくつも重なって、経済はどんどんと大きくなっていくのです。

さて、こういった自己強化型フィードバックループは、雇用に対してどういう影響を与えるのでしょうか?

ル-プ図

需要が増えれば生産規模を拡大することになります。すると雇用は増えます。
一方、労働生産性が向上することは、省力化につながりますから、雇用を減らします。この状況では、労働生産性の向上がもたらす雇用の減少を上回る規模で、経済が成長し、生産規模が大きくなるなら、雇用は失われません。「経済成長率のアップ>労働生産性のアップ」なら大丈夫です。

ところが、経済成長率の伸びよりも、労働生産性の向上のほうが大きい場合、生産規模の拡大による雇用の増加よりも、労働生産性の向上による雇用の減少のほうが大きくなるため、雇用は損なわれ、失業者が出ることになります。「経済成長率のアップ<労働生産性アップ」なら失業が増加してしまうのです。

この1つの構造を見てもわかるように、現在の経済は「経済成長を止めると、雇用が失われ、社会が不安定になってしまう」構造になっているのです。
ですから、その構造を変えずに、経済成長を止めることは別のリスクを生み出します。いくら地球がもたないと言われても、「止めるわけにはいかない!」となってしまうのです。


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